歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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歌舞伎のことば : 「新歌舞伎」 は最新作ではありません

こんばんは♪

今日は昨日に引き続き、

今月の歌舞伎座興業にちなんだ

歌舞伎のことばのお話をしたいと思います。

ひとつ覚えていただけたら嬉しいです(人'v`*)

 「新」歌舞伎?

歌舞伎といえば江戸時代のもの…

というイメージですが、今月の

昼の部「柳影澤蛍火(やなぎかげさわのほたるび)」

夜の部「荒川の佐吉(あらかわのさきち)」は

実は江戸時代に書かれたお芝居ではありませんΣ('0'o)

昭和に入ってからもたくさんの歌舞伎が生まれています。 

特に「荒川の佐吉」は真山青果の作品で、

新歌舞伎と呼ばれるジャンルのものです。 

新作歌舞伎とは言わないことが不思議です…(・.・;) 

一体どういったものを新歌舞伎と呼んでいるのか、ざっくりとお話してまいります! 

江戸から明治へ「演劇改良運動」

そもそも江戸時代の歌舞伎は、

座付の狂言作者によって書き下ろされていました。

近松門左衛門、河竹黙阿弥、鶴屋南北…というお名前は広く知られていると思います。

やがて明治維新を迎え、国がどんどん近代化を進めてゆくなか歌舞伎の世界にも演劇改良運動という波が起こります。

西洋演劇に触れた文学者・学者などがたくさん現れ、歌舞伎にも急速に文明開化の時代がやってきました。

これまでの作品は荒唐無稽で文明的でないぞ、いかがわしく良くないものだ。

もっと歴史に忠実でためになるものにしよう!厳かで高尚なものにしよう!

…という動きがはじまったのです。

黙阿弥の死

しかし、江戸時代の歌舞伎の中心人物であった河竹黙阿弥は時代の大きな変化のなかで限界を悟り、引退することを表明しました(。´_`。)

表明後も活動はあったもののいよいよ黙阿弥が亡くなってしまうと、狂言作者という制度が終わりを迎えます。。

新歌舞伎の登場

明治時代から昭和初期にかけて歌舞伎の世界の外で活躍していた文学者や作家などが、西洋の演劇や近代的な考え方に大きな刺激を受け

歌舞伎の伝統的な表現を踏まえつつも近代の思想を取り入れた戯曲を書くようになりました。

そこで、これまでの狂言作者による作品を「古典」とみなし

外部作家が作った作品を「古典」に対する「新歌舞伎」と呼ぶようになったのです。

これまでの江戸歌舞伎にはないような考え方・人間像が描かれ、歌舞伎という枠組みは逸脱せずに新鮮な味わいを加えてみよう!

という工夫がなされました。

主な作家として、坪内逍遥・真山青果・岡本綺堂・谷崎純一郎・宇野信夫などが挙げられます(人'v`*)

歌舞伎の近代―作家と作品

歌舞伎の近代―作家と作品

 

この激動の時代、様々な思いが渦巻いていたのだと思うと…。。

今こうして歌舞伎を楽しむことができることは何より幸せですが、

時代の混乱のなかで色褪せ、失われていったものもきっとたくさんあるのだろうということに何とも切ない思いがこみ上げてきます。

特に黙阿弥の胸の内などを思うとおおおぉおぉおおおおおと胸が熱くなり、どうにもならぬ思いが沸き上がってしまいます。゚゚(´□`。)°゚。

 

そんな新歌舞伎、古典歌舞伎とはまた違った味わいがあります!

今月のチャンスに、ぜひともご覧になってみてくださいね(´▽`)

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