歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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やさしい角力場 その二 あらすじ

ただいま上演中の新春浅草歌舞伎

第2部「角力場」のお話が途中になっていましたので、続きをお話します。

今回初めて歌舞伎をご覧になる方のお役に立てればうれしく思います。

角力場」は「すもうば」と読んでくださいね(人'v`*) 

ざっくりとしたあらすじ

舞台は大坂堀江のすもう小屋前の風景です。

向かって右手にある、すだれのようなもので組まれた小屋の中ではすもうの興行が行われています。

実際の取組の場面は隠されていますが、音の効果でその様子がいきいきと描かれています。

どうぞ賑やかなすもう小屋の中の様子をイメージしてみてくださいね(´▽`)

 

さて、この日は大一番を控えています。

大人気の関取・濡髪長五郎と、米屋のせがれ・放駒長吉の取組です!

放駒長吉はまだ素人同然で、濡髪の相手にもならないような力士であります。

このおもしろそうな取組を一目見んと人々はわいわいがやがや、楽しそうな様子です。

 

そこへなにやら、綺麗な女性がやってきます(人'v`*)

この女性は吾妻という名前の遊女で与五郎という山崎屋の若旦那と良い仲なのですが、

平岡郷左衛門というさむらいから身請けをされそうになってしまい困っています。

吾妻は恋人の与五郎と身請けの相談をするため、相撲小屋の前で待ち合わせているのです。

 

この与五郎はなよなよ~っとした線の細い可愛らしいお坊ちゃまで、たいへん熱心な相撲ファンであります。

なかでも濡髪長五郎の大の贔屓なのです。

濡髪の取組があるから先に茶屋へ行って待っとってなぁ~」(※イメージ)

とかなんとかで、吾妻はひとまず茶屋へと向かったのでした。 

 

と、そんなことをしているうち

いよいよ結びの一番、濡髪放駒の取組に。

大番狂わせとなり、はるかに格下の放駒がまさかの白星!

わいのわいのと沸いて興奮した観客たちが街へと繰り出してゆきましたヽ(。>▽<。)ノ

取組の結果に沸き立ち、座布団がびゅんびゅんと飛んでいる相撲中継のようすをイメージしてみてくださいね。

 

小屋からは取組を終えた放駒が、さむらいたちと連れだって出てきました。

はるか格上の相手に見事勝利した放駒

さむらいたちはいいぞいいぞと褒めそやします(人'v`*)

このさむらいのうち一人は、先ほどの吾妻を身請けしようと企んでいる平岡郷左衛門。

放駒をこの相撲へと取り立てたのは、どうやらこの人のようです。

 

そんな郷左衛門はこの祝賀ムードにかこつけて「吾妻の身請けに力を貸してほしいんだよね」と放駒にお願いをしました。

困ったなぁとは思うものの、放駒にとってはたいへん恩義のある相手であります。

がってんでごんすー!」と承知し、3人連れだってお祝いの席へと出かけてゆきました。

 

この浮かれた様子を見ていた与五郎。。

贔屓の濡髪が放駒のような素人に負けたなんて、残念でなりません(。´_`。)

しょぼくれているところへ、立派な関取・濡髪長五郎がどっかりどっかりとやってきました。

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若旦那、申し訳ないでごんす・・・」と詫びる濡髪は、

茶店の主人に放駒をここへ呼ぶように頼みました。

 

濡髪は、若旦那吾妻の身請けを心配していることをよく知っています。

そのことは全て、自分にまかせてほしい」と伝え、若旦那を安心させてあげるのでした。

さすがは濡髪、なんと頼もしい関取なんでしょうか…(n´v`n)

気を良くした若旦那はウキウキとして、待ち合わせの茶屋へと出かけてゆきました。

 

濡髪がひとりになったところへ、

派手な祝い着に身を包んだ放駒がやってきますヾ(。・ω・)ノ

 

浮かれている放駒

頼みがある…」と切りだした濡髪は、

「自分の大事な御贔屓である与五郎さんに、どうか吾妻を譲ってほしい」と頼み込みました(>_<)

しかし放駒もまた、郷左衛門に義理を果たさねばなりません。

それはできません」と断ります。

 

それを受けて濡髪が、放駒にとっては許しがたいことを語りはじめました。

この吾妻の件を念頭に置いて、わざとお前に勝ちを譲ったのだよ」と言うではありませんか。

あんなにうれしかった勝利は、出来レースだったのです。

 

これには放駒も、怒り心頭!

卑怯だ!ずるい!真剣勝負をしたうえで頼めよー!

とぷんぷん怒ります。

 

そうはいっても濡髪ははるかに強くとてもかなわぬ相手。

放駒はどうにもならないくやしさを胸に、後日の勝負を約束して別れてゆくのでした。

 

 

…えっここで終わり?

という半端な幕切れの場面です(´▽`)

 

こう書いてしまうと濡髪がなんだかとてもずるい男のように思えてしまうのですが、そうとも言えない事情があるのです。

日本相撲協会などなかった江戸時代のおすもうさんは、取組のファイトマネーだけではとても生活できませんでした。

 

そのためおすもうさんのスポンサーとなる後援者の存在が本当に大切だったのです。

御贔屓の頼みならば命がけでも引き受けようとする、強い忠義の心を持っていました。

 

心から濡髪を応援するあまり、

ちょっとでも「濡髪関は強いですねぇ!」と褒められると嬉しくなって、

大切な持ち物も何もかも人にあげてしまう与五郎さん。

そんな御贔屓の思いを恩に感じればこその濡髪の行動なのでした。

 

現在の大相撲初場所で、

かねてより応援している蒼国来関の優勝争いに食い込むような大活躍がうれしく

つい角力場について書きすぎてしまいました(ノv`*)

 

上演頻度の高い演目ですから、次回の上演の際などお役に立てればうれしいです!

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