歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。 歌舞伎歴10年の20代。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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やさしい実盛物語 その二 黒髪に錦をまとって

ただいま歌舞伎座で上演中の十二月大歌舞伎

第一部「実盛物語」はしばしば上演される有名な古典演目ですので、

少しばかりお話いたします。

何らかのお役に立てればうれしく思います(人'v`*)

 

せめて、若々しく

この「実盛物語」では、

平家物語にある齊藤実盛と手塚太郎の悲劇へ繋がるプロローグ的な設定で

手塚太郎の幼い頃のお話が描かれています。

 

そもそもその元ネタとは一体どういったものかということを

上演の補足として、ざっくりですがお話してみたいと思います(人'v`*)

 

 

 

齊藤実盛というさむらいは、越前の生まれ。

そもそもは源氏方の武士であり、

「源平布引滝 義賢最期」の主人公としても描かれている源義賢に仕えていた人物です。

 

主君・義賢が討たれた後、

遺児の駒若丸(のちの木曽義仲)を木曽に逃れさせてあげた…

という過去が重要ですのでどうぞ覚えていらしてくださいね。

 

その後いろいろあり平家の世に…

実盛はこんどは平家方となって平宗盛に仕えることとなり、

平維盛を大将にした富士川の戦いを迎えることになりました。

維盛といえば「義経千本桜 すし屋」でのひ弱な優男ぶりが思い出されますね(´▽`)

 

この富士川の戦いにおいて実盛は

「鎌倉武士はものすごく強いんですよ!西の武士とはワケが違うなぁ!」

などと、東の勇猛ぶりをあれこれ維盛に話してしまうのです。

 

この話を聞いて平家方は源氏方をあまりにもおそれ、

水鳥が飛び立つ音にもビビりまくり、

戦ってもいないのに撤退してしまった…という

武士にあるまじき失態を招いてしまったのでした(。´_`。)

 

それから数年…

源氏方では、かつて逃れさせてあげた木曽義仲

立派なさむらいに育って挙兵しておりました。

 

これを討とうと平家方は北国へ出陣

しかし、

いまの富山県と石川県にまたがるあたりの倶利伽羅峠にて木曽義仲らから攻撃され、

加賀の国は篠原で再び攻撃を受けたのです。

 

もうだめだ、やむなし!逃げろ~!

と、平家方のさむらいたちが我先に逃げてゆくところ…

ただ一騎、

きらびやかな錦の直垂と萌葱の威を身に着けた若い立派なさむらい

戦い、戦って、木曽義仲方へと攻め入ってきたのですΣ('0'o)

 

木曽義仲方の手塚太郎光盛

「一人戦うとはあっぱれなことよ、名乗りたまえ」

と褒めて問うても、そのさむらいは決して答えることはなく…

「名乗ることはしない。組もうぞ」

自ら戦いをのぞんで討たれ、首となったのでした。

 

手塚太郎光盛がその首を持って木曽義仲の前へ出ますと、

その顔は木曽義仲にとって懐かしい齊藤実盛のものに思われました。

しかし、実盛はもうおじいさんのはずなのに、

やけに髪が黒々として若々しいのです。

 

おかしいなと思い、実盛と親しかった樋口次郎兼光に尋ねてみると

樋口は涙を流して「これは実盛に違いありません…」と言うのです。

 

「昔、実盛は

『60を越えていくさに出るのなら、髪を黒く染めて若返ろうと思う。

若武者と争うのは大人げないし、年寄りだと侮られたくないからな』

と話していたのです」

と涙ながらに話す樋口の言葉を聞いた義仲が首を洗わせると、

確かに黒い染め物が流れ落ち、老いた白髪頭が現れたのでした。

 

もし義仲方が最初から彼を実盛だとわかっていたら、

昔受けた恩とその老いを思って、

討つことはできなかったでしょう。

 

富士川の戦いでの責任を感じていた実盛は最初から死ぬ覚悟であり、

故郷の越前に錦を飾るつもりで錦の直垂で華やかに着飾って

若々しいさむらいとして向かって行ったのだと思われます。

 

 

平家物語 巻第五富士川・巻第七実盛」に

こうした逸話が残っており、

今も男の生き様の伝説として語り継がれているようです。

 

こうしたお話がもとになっているために、

実盛物語」の幕切れで実盛は太郎吉に

成人したら潔く討たれよう

とかっこよく告げる…

このように繋がるわけなのであります。

 

かなり長くなってしまいましたが、

次回の上演の際にでも思い出していただけたら嬉しく思います(人'v`*)

 

 

 

参考:日本古典文学摘集/朝日日本歴史人物事典/歌舞伎登場人物事典

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