歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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やさしい仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場 その三 寺岡平右衛門 モデルの謎

ただいま歌舞伎座で上演されている
歌舞伎座百三十年
松本幸四郎改め 二代目 松本白鸚
市川染五郎改め 十代目 松本幸四郎
松本金太郎改め 八代目 市川染五郎 襲名披露

二月大歌舞伎

新白鸚さんと新染五郎さんの襲名披露狂言

仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場」について、

少しばかりお話したいと思います(人'v`*)

 

討入の日に失踪した平右衛門のモデル

その二では七段目にいたるまでのお話と

簡単なあらすじについてお話いたしましたので、

今回は今月奇数日に仁左衛門さん・偶数日に海老蔵さんがお勤めになっている

寺岡平右衛門という役柄についてお話してみます。 

 

七段目においてはおかるの実のお兄さんとして登場する平右衛門

下級武士である足軽の身の上ながら、

どうにか敵討ちに加わりたい!お役に立ちたい!と、

由良之助のもとへ直談判にやってくる一本気で朴訥とした好人物であります。

 

いざ腹を切ろうとしても親のことを思うとできない、

功を立てようと妹を斬ろうとしてもできない、

足軽という身の上の切なさを感じさせる親しみやすいお兄さんです。

 

そんな寺岡平右衛門には実在のモデルがいるそうです。

その名も寺坂吉右衛門

赤穂浪士四十七士のひとりで、

足軽という軽い身分ながら誠実で実直な、

まさしく平右衛門のような人柄で愛され

赤穂浪士たちの連絡係などを勤めていたそうであります。

 

しかし元禄15年の12月14日、

まさしく吉良邸討入の当日…

泉岳寺の前あたりで突如姿を消してしまったのだそうです。

 

大石内蔵助の手紙では

寺坂吉右衛門儀、十四日暁までこれあり候ところ、

彼の屋敷に見え来らざる由、かろき者の儀、是非に及ばず候

などと厳しく書かれているようです。

 

このことからかつて、

赤穂浪士を四十七士とするか四十六士とするかということで

大議論が巻き起こったのだそうであります。

 

なぜ吉右衛門が討入当日に姿を消したかについては

・密命を受け、手紙を届けていた

・逃げてしまった

・自らの身分のために遠慮した

などなど様々な説が今もなお考察されているようです。

 

仮名手本忠臣蔵でここまで平右衛門がフューチャーされていることからも

庶民の間ではこの失踪事件を含め

とても感情移入のしやすい人物であったことがわかります。

東のお供に加わった時の喜びようなどは、

現代人の私達でも「あぁよかったね」と思ってしまいますから

江戸時代の町人たちにとっては並々ならぬ感動があったのでしょうね。

 

余談ですが文楽の七段目では、

登場人物一役に一人の太夫さんがついて床がとてもにぎにぎしく…

そのうち平右衛門を語る太夫さんだけがひとり下手側におかけになり、

裃も「平」の紋が入った特別なもので

見台・床本なしにて語っておいでだったことに驚きましたΣ('0'o)

 

床はにぎやか、人形もにぎやか、下手には平右衛門と、

どこを見ても楽しく、ワクワクいたしました。

歌舞伎とは違う箇所がいろいろとあり、

また機会があればぜひ拝見したいものだなぁと思っております!

 

参考:歌舞伎登場人物事典/朝日日本歴史人物事典

歌舞伎登場人物事典(普及版)

歌舞伎登場人物事典(普及版)

 

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