歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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やさしい髪結新三 その一 江戸のスキャンダル「白子屋事件」

ただいま国立劇場で上演されている「梅雨小袖昔八丈

数ある歌舞伎演目の中でも非常に有名なものですので、

この機会に少しばかりお話したいと思います。

何らかのお役に立てればうれしいです!

 

元ネタは大スキャンダル

梅雨小袖昔八丈(つゆつゆこそでむかしはちじょう)は、

髪結新三(かみゆいしんざ)という呼び方の方がメジャーとも言えます。

幕末~明治に大活躍した河竹黙阿弥の名作演目で、

江戸の風情が生き生きと描かれていますが

その初演は意外にも明治に入ってからの 1873年(明治6年)です。

 

初演時には既にこのような光景は失われていて、

役者さんたちもお客さんたちもきっとこの芝居で

江戸時代を懐かしく思ったんだろうと思うとなにやら切ないような思いがしてきます。

 

初演以来たくさんの場面が省略され、演出も洗練されて今のような形になり、

現在に至るまで何度も何度も繰り返し上演されています。

 

実はこのお芝居は、

享保12年に江戸の新材木町の材木屋の娘さん・お熊さんが

お母さんと手代と一緒になって、お婿さんの又四郎さんを殺そうとした…という

なんともドロドロとして恐ろしいスキャンダル「白子屋事件」が大元になっています。

 

最終的にお熊さんは大家越前守のお裁きを受けて

市中引き回しの果てに死罪となってしまったそうなのですが、

それはそれは美しく評判の女性だったそうで、江戸の町は大騒ぎに。

 

引き回しの時には白無垢の上に黄八丈の小袖を着ていたそうで、

その出で立ちが人々の間で評判となりました。

それを受けて芝居や読物と呼ばれた本の中であれやこれやとお話が膨らみ、

落語の人情噺『白子屋政談』にも脚色され、

やがて「髪結新三」へと繋がっていったのだそうです。

 

そういったわけで「梅雨小袖昔八丈」とタイトルにも名残があるのですね。

髪結新三のイメージとはかなり違うお熊さんの実態に衝撃を受けつつ、

次回に続きます…

 

参考:新版歌舞伎事典/朝日日本歴史人物事典

新版 歌舞伎事典

新版 歌舞伎事典

 

 

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