歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。 歌舞伎歴10年の20代。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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一世一代の四月をふりかえり・・・ 2018年

早いもので四月も今日でおわり…

仁左衛門さん一世一代の「絵本合法衢」を全身全霊をかけて拝見しました。

 

数か月前より今月に照準を合わせて精神統一しておりましたので、

現在はなんともいえぬ脱力感にやられております…。

最高だったこの二月、三月、四月が終わってしまい、

ただただぼんやり…というところです。

 

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左枝大学之助立場の太平次というよく似た顔を持つ

とんでもない悪人2人を一世一代にてお勤めになった仁左衛門さん。

これまで仁左衛門さんがお勤めになる悪人は数々拝見してまいりましたが、

そんな中でも立場の太平次はずば抜けて異常で共感しうる動機も感じられない

悪いというよりももはやサイコパスというべき人間でしたね。

 

女性に本当に惚れたことはなく、蚊を殺すのも人を殺すのも同じ

というインタビューでお話されていた人物像がとても明確に伝わってきました。 

刀の使い方もさむらいとは違って殺される時の苦痛が大変大きそうなもので、

ヒィイイイイ(((・_・;)))とゾクゾクしながら拝見いたしました。

 

特に象徴的だなと感動したのは、太平次が軒先に隠したお金を取り出すときに

ツバメの子供をキュッとひねり殺す場面です。

ここでは客席からも毎回(ワァ…)と声にならない声が上がっていました。

あれほど何人も人を殺す場面を目の当たりにしているのに、

「ツバメの子をひねり殺す」ということの方がショックを受けるものなんだなと

人の心理を大変興味深く感じました。

あの工夫はどの段階で生まれたものなのか定かではないのですが、

南北か、先代白鸚か、はたまた仁左衛門さんのアイディアである可能性もあり…

今後いろいろと調べてみたいな思っております。

 

蚊を殺すように何人も惨殺した太平次が、

笑いを浮かべて幕切れとなる倉狩峠 元の一つ家の場。

千穐楽で初めて気が付いたことですが、最後の決まりのところで、

フッと太平次の目の輝きが消えて瞳が真っ暗になっていました。

ゾッとするような暗さです。

仁左衛門さんの瞳は役柄と場面に応じて水分量がみるみると変化されますが、

完全に光を消すことも可能なんて…!!!と大きな衝撃を受けました。

 

お顔の筋肉のひとつひとつ、しわの一本一本、

瞳の水分量、輝きのオンオフまでが巧みに絡み合って芝居を作り上げているんだ…

生涯の全てをかけて鍛錬された芸を今まさに拝見している…

しかもこの芝居はもう二度と見られない…

などと考えていたら、一分一秒が惜しく、過ぎるごとに切なく、

仁左衛門さんのお芝居を拝見できたという一点だけで充分に

「この世に生まれてきてよかった」と自分の人生を全肯定できるくらい感動しました。

本当に幸せだと思っています。

 

幕切れの歌舞伎座もそのような幸せな空気に溢れており、

ご出演の方々、周りの客席の方々からも「この場にいる幸福」を感じました。

復帰公演や記念の公演などで拍手が大きく長く続くあまり、

拍手が声をかき消してしまって声が聞き取れないということはよくあることです。

歌舞伎に限らずいろいろな場面でみられます。

 

しかし今回の一世一代の千穐楽では仁左衛門さんの切り口上が始まると、

そのお声に耳を澄ますように、拍手がピタッ…と鳴りやみました。

歌舞伎座全体がこの千穐楽の残り数秒を惜しんでいるのかなぁ

と思えるような、あたたかな一体感に感動いたしました。

 

幕切れとなってからも拍手は鳴りやまず、

私も手を止めることができずに放心しながら幕に向い拍手をしておりました。

「仁左衛門さんはカーテンコールでお出ましになることはない」

ということは様々な書籍やインタビューから存じておりましたので、

アンコールを望む思いからではなくてただ「まだ帰りたくない」とか、

感謝と感動の思いから拍手が止められない、という思いに近かったです。

 

そんな拍手の波が5分ほど続き、幕がするすると動き始めた時は、

目の前のことが信じられませんでした。

驚きの声を上げる方、手を拝むように組んでいる方、涙なみだの方、

勢いよく立ち上がった人波の向こうに見える仁左衛門さんの笑顔…

思い出してもじんわりと目頭が熱くなってきます。

ameblo.jp

孝太郎さんが動画をのせてくださっていました。思い出がいきいきと蘇ってきます。

 

体力的にかなりの負担となる出ずっぱりのお役、

千穐楽までお勤めにならずに休演される可能性もゼロではなかったのだなと

改めて思い知り感謝の思いが増すばかりです。

一世一代と題されないものであっても、

一回一回の芝居をとにかく大切に拝見していこうという思いをさらに強くしました。

 

来月はどんな芝居が待っているのでしょうか。

楽しみに今夜は休みたいと思います。

おやすみなさいませ(人'v`*)

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