歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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やさしい夏祭浪花鑑 その三 団七九郎兵衛の罪

ただいま歌舞伎座で上演中の

歌舞伎座百三十年

六月大歌舞伎!

夜の部「夏祭浪花鑑」はうだるような夏の大坂を舞台にした、男のドラマであります。

大変有名な演目ですので、この機会に少しばかりお話いたします。

芝居見物の楽しみのお役に立てればうれしく思います!

 

主殺しの次の大罪

夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)のお話の流れを

ほんとうにざっくりとお話しますと、

浪花の男伊達である団七九郎兵衛が、

恩を受けた玉島兵太夫のご子息である磯之丞とその恋人の琴浦のために

舅である義平次を手にかけるというものです。

「悪い人でも舅は親、許してくだんせ」というのが名セリフのひとつであります。

 

江戸時代においても現代と同じように殺人は大罪ですが、

中でも自分より目上にあたる人を殺す尊属殺しと親殺しというのは特に刑が重く設定されました。

尊属というのは、お父さんお母さん、お舅さんお姑さん、

伯父さん伯母さん、そしてお兄さんも含まれています。

尊属や親を殺した場合には、引廻しやむごたらしい刑罰が待っていたのです…!

 

実は今月上演されている長町裏の場面の後には、

一寸徳兵衛や釣船三婦たちがなんとしてでも団七を落ち延びさせようと

あらゆる手を駆使する場面が続きます。

あまりにも重い罪だということが念頭にあるからこそ、

長町裏での団七は苦悩し、仲間たちは団七を救わんと必死になるのですね。

 

余談ですが、江戸時代には親殺しよりも重い罪がありました。

それは自分の主人・主君にあたる人物を殺す「主殺し(しゅうごろし)」です。

 

歌舞伎には主君のために腹を切ったり、自分の子供にすら手をかける人がよく登場します。

それほどまでに主君が大切なお方であったということです。

現代の感覚ではよくわからないものがありますが、

それでも感動して胸が震え、自然と涙が出てくるのがおもしろいところです。

 

参考:新版歌舞伎事典/大辞林/百科事典マイペディア

新版 歌舞伎事典

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