この六月は生まれてはじめて博多の地へ降り立ち、
博多座で六月大歌舞伎を見てまいりました!
この機会に少しばかり博多の思い出をお話いたしますので、
いつか遠征なさる方のお役に立てればと思います。
小さな金印に大興奮
今回の遠征以前に私が九州の中で行ったことのある県は、長崎県だけであります。
長崎県の観光の目玉となっている歴史のトピックスは、
出島や坂本龍馬、キリシタンなど江戸から明治にかけての香りがするものです。
私が生まれ育った東京下町でも同じく観光の目玉となっている歴史のトピックスは、
江戸時代の事柄が中心です。
そのため長崎県に降り立った時には特に違和感を感じなかったのですが、
今回福岡に降り立って驚いたのは、
観光の目玉とする歴史のトピックスが「漢委奴国王」の時代、
西暦50年代の超古代であるということです!!これはすごいことです!
日本全国、その土地その土地が刻んできた歴史というのは
こんなにも違うんだと驚きいりました!
そんな福岡最大のトピックスは、福岡市博物館に飾られている「金印」であります。
教科書で何度となく見たあの漢委奴国王と書かれた金印です!
こちらが有名な印影を大きく映しとったもの。
美しい展示方法です。
おそらく日本で義務教育を受けた方ならば全員ご存知であろうこの印…
実物はこちらです!
黒い背景にあたたかな輝きをたたえています。
わずか2.3センチ四方のちょこんとした印なのですが、
その輝きはまばゆいばかりで、真っ暗な空間に神々しく輝いていました。
印影部分はうまく写真に写せなかったのですが、
彫り込まれた文字のエッジが非常に鋭く、たいへん美しいものです。
日本で義務教育を受けた方にはぜひともぜひともご覧いただきたい
興奮必至の展示でありました。
博多に團十郎と岩井半四郎が!!
そんな博多でも、江戸時代になると芝居や相撲、俄の興行なども
さかんに行われていたそうです。楽しい時代ですね。
展示資料の中には
天保五年九月に七代目市川團十郎がやってきた…
というものがありました。
この頃はちょうど江戸三座が大火事で焼けてしまったために、
ビッグスターたちが地方を巡業していた時期であります。
團十郎は長崎へ向かう途中で博多に立ち寄って、興行を行ったようです。
興行には城の女中たちも見物を許されて大入り満員、
小屋に入りきれない人たちが外でも見物をはじめ
さながら大坂の道頓堀のようであった…
と伝わっているそうです。
團十郎はその半年後、長崎の帰りにも後の五代目岩井半四郎と
上方の名役者であった三代目市川蝦十郎と博多で共演しました。
千両役者の團十郎と半四郎を同時に拝み、
江戸と上方のビッグスターの共演を楽しむというのは、
当時の博多では前代未聞の出来事。
その当時の博多の人々の興奮たるや、想像しただけでワクワクしてきます!!
展示物の中には精巧なジオラマもたくさんありましたが
やはりこうした娯楽施設に惹かれてしまいます。
展示の後半ブースには、
「博多っ子として生きるということ」というテーマを元にした
非常に斬新なドラマ仕立ての展示がありました。
精巧なオーディオドラマとともに、
世代をまたいだ博多っ子の生き様を知ることができるというものです。
博物館は大好きですが、いまだかつてこうした展示方法は見たことがありません!
博多という土地への強い愛を感じる興味深い展示でありました。