今月歌舞伎座で上演されていた芸術祭十月大歌舞伎。
豪華なお顔ぶれが勢ぞろいしていた夜の部の助六は、
のちのち思い出深く語られる伝説の舞台となりそうです。
今月は勘三郎さんの追善興行であったため、
勘三郎さんを偲ぶ特別なせりふがいくつか盛り込まれていましたね。
笑いながらもじんわりと胸に沁みる、愛に溢れた一幕でした。
そのなかで巳之助さんがお勤めになった朝顔仙平のものをひとつご紹介したいと思います!
「もっと焼け、もっと焦がすんだ」
朝顔仙平は江戸の街で人気があった「朝顔せんべい」の擬人化!
砂糖煎餅や羽衣煎餅など、人気のおせんべいの数々を盛り込んだ
せんべい尽くしのせりふが笑いどころであったことは以前お話したとおりです。
そんなせんべい尽くしのせりふの中にプラスされていたのが「福屋の勘三郎せんべい」
このおせんべいももちろん実在のものであります!
十八代目勘三郎さんのお父様である十七代目が贔屓にしていたのが、
東京は神楽坂にあります毘沙門せんべい 福屋(地図は記事の一番最後)
十七代目は福屋のせんべい工場の火鉢のそばにかけて、
「もっと焼け、もっと焦がすんだ」とおっしゃったのだそうであります。
お店のご主人が焦がしつつ「これでは苦くて食えませんよ」と困ってしまったところ、
「俺の特別注文なんだから。その調子その調子」と喜ばれたそうです。
そこから他のお客さんたちにも十七代目の特別注文の焦げ煎餅の存在が知れ、
売れに売れて十七代目は喜び
備長の 手焼せんべの 焦げよろしという句を添えて
「勘三郎せんべい」として売りだされることとなったわけです。
以前、どなたかのおうちで一枚いただいたことがありますが、
こんがりとした醤油の香りがしつつもべったりとした甘みは少なく軽やかで、
たいへん美味しかったことを覚えております。
甘いものよりもおせんべいの方が好きなこのすえひろにとっては後を引く味わいでした。
お近くまでお出かけの際にはぜひお試しください(人'v`*)
参考サイト:福屋 公式