早いもので今月も今日でおわり…
今月の歌舞伎座は中村勘三郎さん追善の芸術祭でしたね。
今月は勘三郎さんのお芝居にある湧きたつような楽しさが
劇場のそこかしこに漂っていて、その存在感の大きさをひしひしと感じました。
やはり今月の最大の思い出といえば、夜の部の助六であります。
仁左衛門さんが助六について「今回で集大成」とおっしゃっていたこともあり、
このすえひろも可能な限り足を運びました。
これまで助六を見る時には、そのやんちゃなめちゃくちゃぶり、
江戸っ子らしいとがりっぷりを楽しんでいた私でしたが、
仁左衛門さんの助六はなんというか、もう、ああ本当にモテるのだろうな…
やんちゃな人がタイプの女性だけでなくて、全方位にモテるのだろうな…
と、うっとり思ってしまうような懐の深いカッコよさがあり、
とにかく、もうとにかくたまらなかったです。
あぁ~できることならわたしも吸いつけ煙草をお渡ししたい…!!
もっとできることなら股くぐりもしたい…だって通人もあんなに大喜びしてくぐっているのだし…
あんなに大喜びしてくぐる通人は初めて見たけれどもすごく納得する…
と思いながら、
こんなにひたすら、ひたすらに「カッコよさ」を共感しあえることって
あるんだろうかと感動にうち震えておりました。
助六というのはまったく泣くような芝居ではないのですが、
花道で決まった仁左衛門さんのかたち、舞台の上での佇まいを拝見していて、
そのあまりの美しさ、洗練の蓄積に涙が出ました。
江戸の人が大喜びした助六の「美」というのは単に容姿のことではなくて
隅々まで研ぎ澄まされ抜いたものなのだろうとわかり、たいへん感動したのです。
またこの先、勘九郎さんと七之助さんがさまざまな配役で助六の舞台に立たれるところを、
幾度となく拝見することになるのだと思います。
その際に、仁左衛門さんの助六と玉三郎さんの満江との4人で立たれていた
この豪華な初役の舞台がずっとずっと記憶に残り続けること、
そして今月のおふたりの姿をまぶたの奥に思い浮かべながら
ずっとずっと拝見していけるということを、本当に心からしあわせに思いました。
「初役」というのはこういったすばらしい楽しみがあるんだなと
またひとつ教えていただいたような思いです。
一つの集大成を拝見して切ない思いが湧いてきても、
それがまた形を変えて次に次にと繋がっていくところも拝見できるというのは
この上ない喜びですね。これだから芝居見物はやめられません。
来月はどんな芝居が待っているのでしょうか。
楽しみに今日は休みたいと思います。おやすみなさいませ。