歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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三月をふりかえり… 2019年3月

早いもので今月も今日でおわり…

今月は歌舞伎座と国立劇場で桜の綺麗な演目が上演され、

春の訪れを実感できるひと月でありました。

 

印象深いのはやはり歌舞伎座夜の部「盛綱陣屋」であります。

仁左衛門さんの盛綱はひとつひとつの表情によって

無言のうちに胸の内が手に取るようにわかり、

こちらもぐっ…と息を詰めてさむらいの覚悟に立ち会うような思いでした。

舞台の上から客席の自分のところまで感情がうわっと押し寄せてくるような体験は

生でないと味わえないものであり、貴重なことこの上なく、

同じ時代を生きて芝居をこの目で拝見できることの喜びに涙しました。

 

また盛綱をお勤めになった仁左衛門さんと小四郎をお勤めになった勘太郎さんの

さむらい同士のまなざしのやりとりにも、涙がぼろぼろあふれてしまいました…!

 

感動して筋書の上演記録で小四郎の役を過去にお勤めになった方々を見てみますと、

それはそれは錚々たるお顔ぶれであります!!

1950年代には彦人・孝夫のお名前でご出演になっていた

秀太郎さんと仁左衛門さんご兄弟が

小四郎・小三郎として共演された記録なども見えました。

 

そのお二人とともに子役の大役・小四郎として

お父さまおじさまもいない舞台に立つ勘太郎さん…

小さな背中に背負っているものの重みたるやすさまじいものがあります。

 

素晴らしい舞台を拝見しているとつい忘れてしまいますが、

どんな名優の方も、人間国宝であっても、

最初は小さなお子様なのだよなあ…と感慨深く思いました。

歌舞伎役者の方々がこうして幼い頃から背負い、

人生をかけて取り組んでこられたものを拝見できていることのありがたさを感じます。

 

いつの日か勘太郎さんが盛綱をお勤めになるときには

仁左衛門さんの盛綱を思い出して泣いてしまうだろうと思います。

もしかしたら40年くらいはかかるかもしれず、

その頃私が元気で劇場へ出かけていられるのかわかりませんが、

生涯、先々を楽しみにしていられるというのは本当にしあわせなことです。

 

そして明日は、新元号の発表がありますね!

どのような元号になるのか今からワクワクしております。

こうしたことが喜びをもって予告されているというのは初めてのことであり、

大きな大きな時代の転換点にいることを実感します。

歴史上の出来事はいつも面のように感じられますが、あくまでも点なのですね。

 

さて平成最後の興行となる来月は、どんな芝居が待っているのでしょうか。

楽しみに今夜は休みたいと思います。おやすみなさいませ。

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