歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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やさしい実盛物語 その九 ざっくりとしたあらすじ⑥

ただいま歌舞伎座で上演中の

四月大歌舞伎

夜の部「実盛物語」は近年比較的上演頻度の高い演目であるため、

以前お話したものがいくつかあり、先日まとめました。

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しかしまだあらすじについてはお話しておりませんでしたので、

何回かに分けてお話していきたいと思います。

北国篠原でまた会おう

実盛物語は「源平布引滝(げんぺいぬのびきのたき)」という

長いお芝居の三段目にあたる場面。

二段目にあたる義賢最期の場面とともに人気を呼んでいます。

 

⑤では、無事に葵御前若君さまを生んだところで、

あのいじわるな瀬尾が乗り込んできたところまでお話いたしました。

 

 

瀬尾若君の存在を知られたら大変なことになります。

さあどうする?というところへ、

果敢にも瀬尾に斬りかかったのは太郎吉くんでした。

 

幼いながら立派に戦おうとしているのですね…

 

そんな太郎吉くんを見た瀬尾は、意外な行動に出ます。

なんと太郎吉くんの手に自らの手を添えて、脇腹に刀を突きたてたのです…!

 

一体なぜ…!と驚くところへ、

瀬尾はさらに衝撃の事実を語り始めます。

 

小万の実の父親である平家のさむらいとはこの私であると…。

太郎吉に自分を殺させることで手柄を立てさせ、

駒王丸に仕えさせたいと考えたのだ…というのです。

 

そして瀬尾太郎吉くんに持たせた太刀で、自分の首を取らせるのでした。

赤い顔をしていじわるそうな瀬尾でしたが、

こんな本心を隠していたなんて…と切なくなります。

 

こうして手柄を立てたからは、太郎吉くんも立派なさむらい。

駒王丸さまの家臣となることを許されました。

 

太郎吉くんはさっそく「母の仇!」と実盛に詰め寄ります。

ここからが有名な実盛物語の名場面です。

 

幼い太郎吉くんが懸命に挑むのをほほえましく見ていた実盛は、

今私が討たれてしまっては、幼子相手の情だろうと知られてしまい、

太郎吉の手柄にはならないよと優しく諭します。

そして、成人して兵を挙げた暁には潔く討たれよう

さむらいとさむらいの約束をしてくれるのでした。

 

それを聞いていた九郎助さんが

この子が大人になる頃には実盛さまも白髪頭でしょうねぇと言うと、

それもそうだなあと実盛は笑って、

その時には白髪頭を墨で黒く染めて戦おう。

首を取ったら井戸で洗ってみなさいと将来の戦を予見し、

馬に乗って颯爽と去ってゆくのでした。

 

 

…と、ここまでで実盛物語は幕であります。

 

 

あまりにも衝撃の展開が多いのでつい長くなってしまいましたが、

現代劇では起こりえない展開でも納得して見ることができるのは

歌舞伎のおもしろいところのひとつだなあと個人的には思います。

 

最後のくだりは、斎藤実盛の実際の伝説をもとにしたもの。

さむらいの中のさむらいといわれた実盛らしい

カッコいい幕切れとして有名ですよ!

 

今月の幕見席

今月ダンディな実盛をお勤めなのは仁左衛門さんであります!!

小万は孝太郎さん、瀬尾は歌六さんという見ごたえたっぷりな配役です。

また人気の若手女形米吉さんや、菊五郎さんのお孫さんである眞秀さんもご出演とあって

大変人気の出そうな一幕です。幕見券はお早めのお出かけをおすすめいたします!

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