ただいま歌舞伎座で上演中の
四月大歌舞伎!
夜の部「黒塚」は猿之助さんが約2年ぶりにお勤めになるもので、
なおかつ腕に負われた大怪我からご復帰されて初めてということで
大変注目を集めています。
この機会を記念して少しばかりお話したいと思います。
今も残る「黒塚」
黒塚(くろづか)は1939年(昭和14年)11月に、
東京劇場にて初演された舞踊劇であります。
ざっっっくりとした内容としては、
①奥州安達原の野原にひとり暮らす老女の元へ旅の高僧が訪ねてくる。
②老女は人を恨み呪うようになった自分の哀れな身の上を、高僧に打ち明ける。
③高僧が来世での救いを語ると、老女は喜んで「奥の一間は決して見ないで」と言い残して薪を取りに出かける。
④強力がつい奥の一間を見てしまうとそこには遺体の山!老女は鬼女だったのである。
⑤僧の教えを受けて晴れやかな気持ちになった老女が、すすきの野原を歩いていると、強力がすごい形相で逃げてきた。
⑥高僧たちの裏切りを悟った老女は鬼と化し、食い殺そうと襲い掛かる…!
というものです。
その三では恐ろしくも悲しい「安達ケ原の鬼婆伝説」についてお話しましたが、
まさしくこの伝説の地として今も伝わっているのが
福島県二本松市安達ケ原の観世寺というお寺であります。
ここはまさしく鬼婆を退治した阿闍梨祐慶が開いたお寺で、
鬼婆となった岩手が暮らしていたという岩屋「笠石」や
血の付いた出刃包丁を洗ったという「出刃洗いの池」などなど
ゆかりのものが数多く残されています。
これは笠石とのこと…
大震災を経てもこのポジションを保っているわけですから、
なにやら底知れぬパワーを感じます…!!
昔の人々の巨石に対する信仰と畏れの気持ちから鬼婆の伝説が生まれたのでしょうか。
実は鬼婆・岩手が眠ると伝わるお墓もこの観世寺の近くに残されており、
そのお墓こそが「黒塚」と呼ばれているのだそうですよ。
黒塚:〒964-0938 福島県二本松市安達ヶ原4丁目
この黒塚については平安時代の歌人・平兼盛が
みちのくの 安達が原の黒塚に 鬼こもれりと 聞くはまことか
と詠んでいるそうです。
兼盛もわからないくらい昔なんて一体いつのお話やら…とも思いますが、
暮らしていた岩屋もお墓もあるのだぞと言われますと、
なにやら妙に真実味も感じられるようで、
やだな~やだな~怖いな~怖いな~という思いがしてきます。
近隣には史料館などもあるそうですので、
ゴールデンウイークに東北方面に行かれる方はいかがでしょうか…!
参考文献:怪異・妖怪伝承データーベース/鬼と研究
今月の幕見席
公演もあと少しとなりましたので黒塚の幕見席はかなり混み合うことが予想されます。
上演ギリギリではなく、早めにお出かけになることをおすすめいたします。
演目の中には上から見ると大変美しい場面がありますので、
下のお席でご覧になった方にもぜひ一度上からの眺めをお勧めしたく思います。