歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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やさしい梶原平三誉石切 その七 ざっくりとしたあらすじ⑤

ただいま歌舞伎座で上演中の六月大歌舞伎

夜の部は人気脚本家の三谷幸喜さんによる三谷かぶきが話題を呼んでいますが、

昼の部も古典歌舞伎の名作が並んでおり見逃せません。

特に「梶原平三誉石切」は、上演頻度の高い演目であります。

 

先日、過去のお話をまとめましたがお話したりませんので、

今月はこの続きをお話してまいりたいと思います。

芝居見物のお役に立てればうれしく思います!

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手水鉢を一刀両断!

梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり)は、

1730年(享保15年)2月に大坂は竹本座にて人形浄瑠璃として初演された演目。

その半年後、同じく大坂は角の芝居にて歌舞伎として上演されました。

 

1600年ごろ生まれた歌舞伎の400年の歴史のなかでは比較的古い演目です。

古い演目というのは、現代の人々が見ているテレビドラマのように

人間関係が絡み合い複雑な心理を描き出すようなものではなく、

たいへんおおらかな内容であることが多いものであります。

 

梶原平三誉石切もそのようなものではありますが、

内容がおおらかであり、長い長い歴史を持つからこそ

代々のたくさんの役者さんによって所作の一つ一つに細かい工夫の凝らされた

様式的なかっこよさが際立つという魅力もあるのかなと思います。

ごく簡単に物語のあらすじをお話しております。

 

その④では二つ胴が失敗してしまい、要り様のお金が手に入らず、

もはやこれまで…と六郎太夫さんが自害しようとするところを

梶原景時が止めるところまでをお話いたしました。

長くなりましたが今回であらすじはおしまいです。

 

そもそも六郎太夫親子に三百両のお金がいま必要なのは、

娘のさんのお婿さんが源氏方の真田文蔵であるから。

源頼朝の再挙兵の軍資金とするため、

さんも身を売らねばと思い詰めるほどの状況だったのです。

実はふたりは源氏方の人間、平家のさむらいたちにはそれを隠して

どうにかお金を作ろうとしていたのであります。

 

実は梶原景時は、二人が源氏方であることに気づいていました。

なぜならさきほど刀の目利きをした際、

源氏ゆかりの「八幡」の銘が刀に刻まれていたからです!

 

いまは平家のさむらいである景時の本心も実は源氏方にあり

先の石橋山の合戦では頼朝を助けたのだよ…と語るのでした。

そういった心があるから梶原六郎太夫を助けてくれたのですね。

優しさと知性に満ちたさむらいぶりに胸が熱くなります。

 

おおおと六郎太夫親子も感じ入るところ、

梶原景時はふたりを手水鉢のそばへと招きよせて、

水面に二人の影を映して二つ胴に見立て、エイヤッと刀を振り下ろします!

 

するとどうでしょうか、

大きな大きな手水鉢がスパーンッ!!と一刀両断!

 

固い巨石をパカーンと二つに割ってしまうなんて…!

六郎太夫のおうちの刀は本当に素晴らしい名剣だったのです!

切り手も切り手、剣も剣、と舞台の上は最高潮に盛り上がります。

 

そんな名刀は梶原景時が三百両で買い取ってくれることになり、

六郎太夫もよろこび、みんなうれしくめでたしめでたし…

というところで梶原平三誉石切は幕となります。

人形浄瑠璃をもととする義太夫狂言というジャンルでは悲劇的な物語が多く、

やったーやったーという空気で芝居が終わるのはなかなか貴重かと思います!

 

またこの演目にはいろいろな型があり、

お勤めになる方によって演出が少しずつ変わってきます。

ぜひ、さまざまな配役でご覧になってみてくださいね!

 

今月の幕見席

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