歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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夜の部を見てきました! 2019年6月歌舞伎座

先日のお話ですが歌舞伎座へ出かけ、

六月大歌舞伎の夜の部を見物してまいりました!

備忘録としてぽつぽつと感想を残しておきたいと思います。

 

夜の部は三谷幸喜さん作の三谷かぶき「月光露針路日本

歴史漫画「風雲児たち」を原作とする作品です。

 

舞台となるロシアにちなみ歌舞伎座の売店にはロシアのお菓子や

ロシアの人気キャラクター、チェブラーシカのグッズなどが売られていました。

実はこのすえひろチェブラーシカも大好きですので

思わずコラボクリアファイルを購入してしまいました。

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大黒屋光太夫チェブラーシカだそうです。かわいいですね…!!!

 

新作ということでどんな内容か楽しみにしていらっしゃる方も

大勢おいでのことと思われます。千穐楽まではまだ数日ありますので、

どうしてもネタバレは避けたい!という方は

どうぞこの先をお読みにならないようお気を付けください!

 

 

この先ネタバレ注意

月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと)

お芝居の詳細について今は記述を控えますが、ざっくりというと…

伊勢から江戸を目指す大黒屋光太夫率いる船が激しい嵐に見舞われ

8か月間海を漂流したのち、はるか遠くロシアに降り立ってしまい

極寒の地での厳しい生活のなか仲間をつぎつぎ失いながら

日本への帰国をただひたすらに願い続けて広大なロシアを転々とし

10年の時を経て女王エカテリーナに謁見、さあどうなる?という物語でした。

 

三谷幸喜さんの作品らしく、笑える場面もたくさん盛り込まれていて

八嶋智人さんの愉快な役どころもあり現代劇的感覚で楽しめるものでありました。

しかしながら、個人的には歌舞伎らしさを感じました。

それは竹本が使われていた、古典風の演出があったという表面的な意味ではなくて

物語に普遍性があるかどうかという意味でであります。

 

古典歌舞伎の「俊寛」を思わせる演出もありましたが、

故郷に帰りたいという本能的な欲求と、

それが叶わない絶望は古今東西に通ずるものだと思うのです。

できることなら今回の三谷かぶきを今回限りにせず

数十年ののち別の演出、別の配役でも見てみたいなあと思っています。

 

また余談ですが、今月コラボしていたチェブラーシカも、

根底にある孤独感やアイデンティティの喪失の不安という部分で

今回の風雲児たちと深く繋がっているように思いました。

 

チェブラーシカはどこかの国からミカン箱に紛れ込み

たった一人ロシアに流れ着いてしまった正体不明の生き物で、

自分が何者なのかわからず、縁者もいないという孤独を抱えながら過ごし

同じく孤独な人々と絆を深めていくという物語であります。

 

ロシアという土地のイメージや歴史的な背景を考えますと

そんな孤独感を引き立てる要素が豊富にあり

物語の舞台として大変魅力的だなあ~と改めて思った次第であります。

 

今月の幕見席

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