こんばんは♪
六月大歌舞伎「義経千本桜」について主に役に焦点を当ててお話して参りましたが、今日はいよいよ今月の第三部の主人公 狐忠信のお話をしたいと思います(´▽`)
物語の流れ
紆余曲折を経てとある館にかくまわれていた義経のところに愛妾・静御前の守護を託していた家来の忠信が訪ねてきますが、全く話がかみ合いません。。
なんだか怪しいぞ!と忠信を捕らえたところ、なんと静御前と忠信がもうひとり館に現れましたΣ('0'o)
そこからいろいろとあり、二人目の忠信は実は狐で、義経が静御前に渡していた初音の鼓に使われている皮(狐の皮)の子供だということが判明します! 驚愕の事実です!
一心に親を恋しがる源九郎狐のこころに胸を打たれ、義経は源九郎狐に鼓をプレゼントすることにしました。めでたしめでたし…ヽ(。>▽<。)ノ
突如ファンタジックな展開になりましたので、なんの話だと思われた方は、このブログのやさしい「義経千本桜」その1~3をお読みください♪
奈良県の大和郡山市にはこの伝説ゆかりの源九郎稲荷神社という神社があるそうですので、お近くの方や関西に旅行なさる方はお出かけになってはいかがでしょうか♪
源九郎狐の衣装
ここでは川連法眼館の衣装についてお話します(´▽`)
狐の姿となってからの白いふさふさの衣装は、4階から見ているとフェイクファーのように見えますが実は毛縫と呼ばれる刺繍なのです。
白い布に白い絹糸をよじって刺繍しているのだそうで、着物だけでなく帯にもびっしりと刺繍されている、ものすごく手の込んだものです。
栗の実からゴォーッと炎が出ているようなオレンジの刺繍は火焔宝珠と呼ばれる吉祥文で、狐火を思わせるものとなっています。
対照的な二つの味わい
この場面の源九郎狐の演じ方には、音羽屋・澤瀉屋と二つの系統があります!
澤瀉屋の型では獣としての狐を表現するためにアクロバティックな演出が取り入れられ、
音羽屋の型では動きの派手さよりも子狐の親を思う心をじっくりと見せることに重きが置かれています。
エンターテインメント性の高い澤瀉屋の型も、あくまでも主題は「親を慕う子狐の情」です。
この場面はどちらの型も心が洗われるようと言いますか、なんともいえず嬉しくあたたかな気持ちになり自然に涙がこぼれてしまいます。
今月は澤瀉屋の型で上演されていますが、音羽屋の四の切もすえひろは大好きです!機会があればぜひ見比べてみてくださいね(人'v`*)
独特のセリフ回し
源九郎狐は正体を明かしてから、急に不思議なセリフ回しになってしまいます。
「カァーーーンムテンノウ(桓武天皇)」というように、最初の音をグッと伸ばして後の言葉は早口になります。声のトーンもかなり高く発されます。
これは狐言葉と呼ばれるもので、人間でなく獣であるということがよくわかる演出です。
手つきや首の振り方など、随所に獣を表現するための工夫がなされていますのでよーく注意してご覧ください(人'v`*)
義経千本桜の三役
ここまで知盛・権太・狐忠信の三つの役についてお話してまいりましたが、この三役は「立役の卒業論文」とも呼ばれているらしく、昔から三役こなせる役者が名優と言われてきたのだそうです。
どれも見れば見る程に味わい深い役で、演じられる方が変わるたび観客としても新たな発見があります(n´v`n)
義経が主役なんじゃないの…?義経千本桜じゃないの…?
とお考えの方もおいでかと思いますがそれについてはまた折を見てお話したいと思いますので、今日はこのあたりで失礼いたします(´▽`)