今月上演されていた仮名手本忠臣蔵五段目に登場した斧定九郎という役柄については、先日お話しましたよね(´▽`)
この斧定九郎という役の今の形を考案したのが、初代中村仲蔵という人物です。
元の定九郎は山賊姿の残忍でガサツな男で、今ほどの特別な魅力はない役柄でした。
それを仲蔵は
・江戸の市中で見かける浪人者の姿をそのまま取り入れた扮装に変え、
・遊びの金に困って悪事を働く
という動機に変えて演じてみせたのです!
このアイデアのおかげで、定九郎は一躍出世役として一世を風靡。
現代においても五段目の上演が決まると「定九郎は誰がやるのかな(*´艸`)」と気になってしまうような魅力的な役柄が生まれました。
この初代中村仲蔵という方は大変興味深い人物ですので、せっかくですからお話しておきたいなと思います(人'v`*)
初代中村仲蔵・なかむらなかぞう
初代中村仲蔵(1736~90年)は、江戸時代の歌舞伎役者です。
4歳の時に五代目中山小三郎・志賀山お俊という芸事をしていた夫婦のもとに養子にもらわれ、
7歳で舞踊のお稽古を始めるとともに二代目中村伝九郎のもとに入門し、10歳で中村中蔵を名乗って初舞台を踏み役者としての人生がスタートします。
しかし、そんな中蔵の人生は順風満帆にはいきませんでした。゚゚(´□`。)°゚。
途中で役者を廃業したり、役者に戻っても御曹司でないこともあり悪待遇の上なぶり者にされる・・・などそれはそれは大変な苦労を経て、中蔵の名を仲蔵に改めます。
そしてあるとき与えられた定九郎の役が、大きな転機となりました!
先ほどお話した斬新なアイディアで大評判となり、見事大大大出世を果たしたのですヽ(。>▽<。)ノ
当時の役者は衣装などを自前で用意していたそうですから工夫の見せどころだったんですね。
この仲蔵と定九郎のお話は大変有名で、落語や講談でも語り継がれています。
その後も仲蔵型、仲蔵振りといわれるような後の世に残る表現をたくさん生み出し、一代で仲蔵の名を大名跡としたのでした。
大きな名跡を襲名する事が名誉なのだろうなと捉えがちですが、自身の芸でその名跡を大きくするというのも同じく偉大なことです。
仲蔵狂乱
松井今朝子著「仲蔵狂乱」
これは歌舞伎をお好きな方にはぜひ一度お読みいただきたい一冊です!
役者絵などで見知った名前がたくさん出てくるのでおもしろく、すえひろも夢中で読んでしまいました。
江戸歌舞伎のようすや役者たちの人生がたいへん物悲しく感じられ、現代広く持たれている歌舞伎役者の印象とは随分違うのではと思われますが、こうした歴史を経て今があるわけですね。
歌舞伎を見始めたばかりの方もぜひご一読ください(´▽`)