ただいま歌舞伎座で上演中の團菊祭五月大歌舞伎!
七世 尾上梅幸 二十三回忌
十七世 市村羽左衛門 十七回忌と銘打たれた公演で、
みどころいっぱいの演目がずらりと揃っています。
昼の部「吉野山」について、少しばかりお話しております。
その一
「吉野山」にいたるまでの大前提
ひとまずはこの舞踊で描かれているものの大前提をお話したいと思います。
①壇ノ浦でみごと平家を破った源氏!
②しかし源義経はいろいろとあって頼朝から憎まれ、都を追放されてしまうことになりました…
③義経は都を去るとき、愛妾の静御前に「これを形見にしてね」と大事な大事な初音の鼓を渡しました。
④そして家臣の佐藤四郎兵衛忠信に静を守護するよう命じ、旅立って行ったのでした。
…ここまでが義経千本桜の最初にある「鳥居前」という場面のおおまかな内容です。
そして「吉野山」の後のおはなし
これを念頭に置いたうえで、義経千本桜のいろいろな物語はすっ飛ばしてクライマックスの「川連法眼館」という場面まで飛びましょう。
鎌倉方から逃れて旅をつづけた義経はいま川連法眼に匿われており、追ってきた静御前と無事再会できました。
静御前は再会を喜びますが、お供につけていたはずの佐藤四郎兵衛忠信がいません。。
おかしいなぁと思った静が初音の鼓をポンポンと鳴らすと、どこからともなく忠信らしき人物が出現!
なんと、ずっと忠信だと思っていたお供の男というのは、実は狐であったのです!
ええええと思ってしまいますけれども、ここからがまた驚きです。
この狐というのはなんと、
初音の鼓に使われている皮の子供だったのです!
仰天の設定。。
しかし子狐は親恋しさのために、鼓のそばにいたい思いで必死にお供をしていたんです…なんだか泣けてきてしまいます。。
吉野山では
これらをふまえて「吉野山」では、
静御前はまだ知らないけれど、
あの人は狐で、
あの鼓がお父さんお母さんなんだよね
というのが前提になっております。
忠信が時折、妙な動きをするのも、そういったわけがあったんですね。
冒頭の「恋と忠義はいずれが重い」という詞章は非常に有名です。
ぜひ聞き取って、舞踊を味わってみてください!