ただいま歌舞伎座で上演中の八月納涼歌舞伎!
第一部「刺青奇偶」について少しばかりお話いたします。
なんらかのお役に立てればうれしく思います(人'v`*)
新歌舞伎の名作者 長谷川伸
「刺青奇偶」の作は長谷川伸(はせがわしん)
大正昭和年間に活躍した劇作家・小説家です。
小学校を中退してあらゆる仕事を転々とするなどの苦難を経た長谷川伸は、
やがて新聞社に勤め、小説などを発表して作家としての人生を歩みはじめます。
早いうちから劇作もたくさん発表しており、
「瞼の母」や「一本刀土俵入」「沓掛時次郎」などなど、
現在も歌舞伎で上演される人気の演目を数々生み出しました。
時代劇などでも愛されているいわゆる「股旅物(またたびもの)」の先駆けとして、
任侠の世界で生きる人々の情愛や義理人情を描いています。
涙なしには見られない代表作「瞼の母」
ここでひとつ、代表作の「瞼の母」のお話をしたいと思います。
こちらは昭和6年に明治座で初演されたお芝居ですが、歌舞伎のみの上演ではありません。
劇団新派や新国劇などの演劇、また浪曲や講談などの語り物などにも取り入れられ、
そのうえ映画化までされた名作であります。
諸々はしょりながら物語をお話しますと…
滋賀の番場に生まれた忠太郎が主人公です。
番場(今の滋賀県)に生まれたやくざものの忠太郎は、危うい暮らしぶりをしています。
しかしその胸には生き別れたお母さんへの思いがあり、行方を尋ねて旅に出ることにしました。
やがて江戸へとたどり着いた忠太郎。
柳橋のとある料理屋の女将・おはまさんこそが、探していたお母さんらしい…とわかり、会いに行くことに。
おはまさんはやはりお母さんで、忠太郎と会ってすぐに「私の息子だ!」と確信するのですが、かたくなに母だとは名乗りません。。
何故ならおはまさんには今、大事な娘・お登世がいるのです。
娘の迷惑を考えれば、やくざものの忠太郎を息子だと認めるわけにはいきません…。
そんなお母さんの姿に忠太郎は失望し、立ち去ってゆきます。
一方お登世は忠太郎が兄だと気づき、おはまさんを説得。
おはまさんとお登世は慌てて忠太郎の後を追い名前を呼ぶのですが、
忠太郎はひっそりと物影に隠れ、瞼を閉じれば浮かぶお母さんの面影を胸に、
ひとり旅立ってゆくのでした…
なんとも味わい深い物語です。。
実際に長谷川伸は3歳でお母さんと別れてしているそうですから、それを思うと一層物語が胸に沁みるようです(;_;)
近年の歌舞伎では2013年の明治座で、獅童さんが忠太郎をお勤めになっています。
近くまた上演があるとうれしいですね(n´v`n)