ただいま国立劇場で上演中の「隅田春妓女容性」!
千穐楽が間近に迫ってはおりますが、
今年の締めくくりに少しばかりお話をしてみたいと思います(人'v`*)
江戸の名優・沢村宗十郎の当たり役
「隅田春妓女容性(すだのはるげいしゃかたぎ)」は、
「梅の由兵衛(よしべえ)」という通称でも知られております。
「梅の由兵衛」のモデルは二人いるようで、
一人は吉原の男伊達であった梅の与四兵衛
もう一人は元禄期の大坂で悪さをしていた梅渋吉兵衛という実在の悪党です。
犯罪を犯し処刑されたはずの梅渋吉兵衛は、
歌舞伎や浄瑠璃などのフィクションの世界で盛り立てられ、
梅の与四兵衛の男伊達のカッコいいイメージが加わり、
いつの間にか仁義の侠客として描かれるのが常となりました。
そんな梅渋吉兵衛と梅の与四兵衛をモデルにした演目は「梅の由兵衛物」という
ひとつのジャンルを確立しています。
「ご存知」と付くのはそういったわけだったのですね(´▽`)
そんな梅の由兵衛物の中でも、決定版といえるのが
初世並木五瓶作の「隅田春妓女容性(すだのはるげいしゃかたぎ)」です。
1796(寛政8)年1月、江戸は桐座にて初演された演目で、
この時主人公の由兵衛を演じたのは江戸随一の名優・三代目沢村宗十郎でした。
ここからさかのぼること60年の1736年
こちらもまた名優と称された初代の沢村宗十郎が
同じく梅の由兵衛物の演目「遊君鎧曽我」にて梅の由兵衛を演じて大当たりとなり、
以来、沢村宗十郎家の家の芸となったのです。
そんなところから梅の由兵衛のトレードマークである頭巾は、
「宗十郎頭巾」とも呼ばれるそうですよ。
ちょうど、梅の由兵衛を演じている沢村宗十郎の浮世絵が見つかりました!
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まさしくこれが宗十郎頭巾であります(´▽`)
1729~58年頃に活躍した鳥居清重の画なので、
これはおそらく初代沢村宗十郎のではないでしょうか。
大当たりとなり、拵えの型が確立したのも納得のカッコよさです(n´v`n)♡
参考:歌舞伎登場人物事典/日本大百科全書/朝日日本歴史人物事典