歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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やさしい勧進帳 その一 七代目團十郎の功績

ただいま歌舞伎座で上演中の
歌舞伎座百三十年
松本幸四郎改め 二代目 松本白鸚
市川染五郎改め 十代目 松本幸四郎
松本金太郎改め 八代目 市川染五郎 襲名披露
壽 初春大歌舞伎

二か月続く大変にぎにぎしい襲名披露の興行、

テレビなどでもたくさん紹介され、注目が高まっています!

 

中でも大きな話題を呼んでいるのが、

新幸四郎さん、新染五郎さんの襲名披露狂言「勧進帳

数ある歌舞伎演目の中でも屈指の名作であり、

まさしく”歌舞伎を代表する演目”と言っても過言ではないほど有名です。

 

このすえひろも勧進帳は大好きで、

思い浮かべるだけでもじんわりと涙が出てきてしまいます。

 

息つく間もないほど見どころ続きの素晴らしい演目ですが、

ノーヒントでいきなり見るとわかりにくいものでもありますので

上演を期に少しばかりお話してみたいと思います。

非常に奥深い演目ですのでほんのさわり程度になりますが、

なんらかのお役に立てればうれしく思います。

 

市川團十郎家の芸「歌舞伎十八番」のひとつ

勧進帳(かんじんちょう)の初演は江戸末期

1840(天保11)年3月の江戸・河原崎座。

七代目市川團十郎によって上演されました。

 

能の「安宅(あたか)」という演目を元にした演目であり、

原作の詞章や筋立てを忠実に再現しつつ

大道具まで能の舞台さながらに作り

歌舞伎ならではの華やかさとドラマ性を加えた

当時としてはとても目新しいものだったようです。

 

市川團十郎家に伝わる歌舞伎十八番のうちのひとつとして制定されていますが、

天保3年の歌舞伎十八番制定時に加えられた「勧進帳」というのは

その時点よりも100年以上前に初代團十郎が上演していた

弁慶が勧進帳を読んで関所を通る話

というひとつの趣向のことであって

現在見ることができるあの「勧進帳」のことではなかったようです。

 

歌舞伎十八番を制定したその人である七代目團十郎は長年にわたり

初代と二代目が上演していた「勧進帳」を復活したい、

しかも能にできるだけ忠実に、古風に仕上げたい

と目論んで、現在の「勧進帳」を作り出したのだそう。

 

七代目團十郎の素晴らしいアイディアのおかげで今もこうして

勧進帳のドラマに感動できるということに感謝の気持ちが湧いてきます!

 

参考:新版歌舞伎十八番 十二代目市川團十郎著

新版 歌舞伎十八番

新版 歌舞伎十八番

 
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