ただいま歌舞伎座で上演されている
歌舞伎座百三十年
松本幸四郎改め 二代目 松本白鸚
市川染五郎改め 十代目 松本幸四郎
松本金太郎改め 八代目 市川染五郎 襲名披露
二月大歌舞伎
襲名披露狂言ではないものの昼の部「暫」はとても有名な演目ですので、
この機会に少しばかりお話したいと思います!
何らかのお役に立てればうれしいです。
顔見世興行のお約束
スーパーヒーローが悪を成敗する「暫」
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この演目の初演はかなり古く1697(元禄10)年までさかのぼり、
初代團十郎が江戸は中村座の「参会名護屋」でこの場面を演じたのだそうです。
その前の1692(元禄5)にはすでに原形があったそうで
江戸ではこのような単純明快なヒーロー物語が好まれていたことがよくわかります。
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これは二代目團十郎と推測されているそうですが、
ぎゅうぎゅうの芝居小屋の中でもものすごく目立っていますね!
江戸時代には毎年11月に
「向こう一年の歌舞伎興行はこの顔ぶれでお送りします」という意味合いの
顔見世興行とよばれる歌舞伎界のお正月イベントが行われていました。
その顔見世で必ず上演されることになっていたのがこの暫の趣向なのです。
江戸時代の人々はこのど派手なヒーローとお約束の悪者成敗を見て
これから一年楽しみだなぁとワクワクしていたのだろうと思われます。
その頃は演出やら役名もいろいろだったそうで、
現行のように独立した演目と定められたのは意外にも明治時代に入ってからです。
このブログでも再三お名前が登場している劇聖・九代目團十郎が
「歌舞伎十八番の内 暫」と題して上演したものが現在まで継承されています。
現代の感覚で冷静に考えるととても面白いお話とは思えないのに
理屈抜きでこんなにも面白く楽しく、しかも美しいというのは、
それだけ研ぎ澄まされ洗練されているということですよね。
長い長い歴史と伝統の重みが感じられます。
参考:新版歌舞伎事典/新版歌舞伎十八番