歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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松本幸四郎の名跡 その二 大出世を果たした四代目

現在歌舞伎座では二か月にわたって、

高麗屋三代襲名披露がにぎにぎしく執り行われていますね!

このおめでたい襲名披露にちなみまして、

江戸歌舞伎の大名跡「松本幸四郎」について少しばかりですがお話してみたいと思います。

なんらかのお役に立てれば嬉しく思います!

 

胸の熱くなる一大出世物語

現在襲名披露をなさっている当代の幸四郎さんは十代目。

ここからぐぐっとさかのぼること280年あまり…

四代目幸四郎の時代になります。

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Home | The Metropolitan Museum of Art

 

四代目幸四郎はそもそも三代目とは血縁ではなく

下積みに下積みを重ねた苦労人でありました。

 

生まれは京都。

8歳という幼さで江戸は市村座の名女形・初代瀬川菊之丞の弟子となり、

瀬川金吾を名乗って初舞台を踏みます。

 

このころ歌舞伎界では、「色子(いろこ)」と呼ばれる美しい少年たちがいました。

これはつまり舞台に立つ役者としての仕事だけでなく

男性に春を売るお相手もまたひとつの仕事として勤めていたというわけなのであります。

 

四代目幸四郎は幼いころからこの色子をつとめ、

そこから若衆方(わかしゅがた)と呼ばれるまたも美少年専門の役者になり…

 

そして立派な大人の男になった頃、

ようやく瀬川錦次を名乗って立役の役者になります。

これがなんと、まったくもって人気が出ず、

一時は役者を辞めようとすら思っていたそうであります。

 

しかしながら、美しさを消費される悲しみを長らく味わってきた方です。

ただでは起きぬ強さを持っていました。

上方出身の柔らかみを活かした「和事」と呼ばれるやわらかな演出を武器にして

めきめきとスターダムへのし上がっていくのです!

 

まずは「木場の親玉」と呼ばれた四代目團十郎二代目幸四郎)の元へ弟子入り。

宝暦12年のころ、まず初代市川染五郎を、

翌年には初代市川高麗蔵を名乗ります。

 

このころ、同じように最下層の役者として辛酸をなめていたのが中村仲蔵

彼と共に四代目團十郎が開いていた芝居研究会に熱心に通い…

「和事」と「実事」の実力をめきめきとのばして評判を呼び、

ついに師匠の名跡である幸四郎四代目として襲名できるほどに大成したのです!

 

色子から座頭格の役者にまで上り詰めた四代目幸四郎の並々ならぬ努力と才能、

そしてそれにきちんと目をかけて名跡を継がせてくれた四代目・五代目團十郎の大きさ…

なんとも胸が熱くなるドラマです…。゚゚(´□`。)°゚。

 

ちなみに、松井今朝子さんの『仲蔵狂乱』でも

最下層にあった仲蔵とライバルのように切磋琢磨して

不思議な色気と野心でぬるぬると四代目幸四郎へと這い上がっていく男

瀬川錦次がとても魅力的に描かれています!

仲蔵狂乱 (講談社文庫)

仲蔵狂乱 (講談社文庫)

 

 あっぱれとすら思える出世物語、ぜひお読みください♪

 

参考:歌舞伎 家・人・芸/日本大百科全書

歌舞伎 家・人・芸 (淡交ムック)

歌舞伎 家・人・芸 (淡交ムック)

 
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