ただいま歌舞伎座で上演中の
團菊祭五月大歌舞伎
十二世市川團十郎五年祭
十二代團十郎さんがこの世を去られてから五年の追善として
ご子息の海老蔵さんが当たり役をお勤めになり
團十郎さんらしく明るく華やかな興行となっています!
そんな今回の團菊祭にちなみ
昼の部「雷神不動北山櫻」について、少しばかりお話したいと思います。
芝居見物のたのしみのお役に立てればうれしいです。
鳴神上人と一角仙人
雷神不動北山櫻(なるかみふどうきたやまざくら)には
「毛抜」「鳴神」 「不動」という三つの歌舞伎十八番が含まれていますが
中でも特におもしろく魅力あふれるのが「鳴神」の場面です。
超人的なパワーを持った聖なるお坊さんが
天下一の美女の色仕掛けにうっかり迷ってしまい、さあ大変だ!
という筋立てで、
思わず笑ってしまうような普遍的なおもしろさがありますね。
超人的なパワーを持った聖なるお坊さん・鳴神上人はそもそも、
インドから伝わった仏典に登場し、今昔物語・太平記などに書かれ、
能の演目にもなった「一角仙人」のお話がもとになっています。
その内容というのはこういったものです!
①鹿から生まれて頭に角が一本生えているため「一角仙人」と呼ばれた仙人がいた
➁一角仙人はある日、大雨で足を滑らせ山から転げ落ちてしまった
➂雨を降らせる竜神に腹を立て、仙人は竜神を洞窟に閉じ込めた
④このままでは国中が干上がり困ってしまう…と国王は「後宮で一番の美女・扇陀女を送り込みハニートラップを仕掛ける」という作戦を実行
⑥仙人は扇陀女にすっかり舞い上がってしまい、とうとう戒律を破ってしまう
⑦仙人の神通力は失せ、雨が降り始めた。めでたしめでたし…
どんな時代のどんな人でも美女の色香にはかなわないんだねという
愉快なあるあるネタでしょうか。
この手の話題に関しては
いろいろと敏感で難しい世の中になりつつありますけれども、
個人的にはいつまでもこうした演目で
おおらかに笑っていられたらいいなぁと思います。
参考:新版歌舞伎十八番/新版歌舞伎事典