ただいま歌舞伎座で上演中の
團菊祭五月大歌舞伎
十二世市川團十郎五年祭
十二代團十郎さんがこの世を去られてから五年の追善として
ご子息の海老蔵さんが当たり役をお勤めになり
團十郎さんらしく明るく華やかな興行となっています!
明治時代の名優・九代目市川團十郎と五代目尾上菊五郎の
功績をたたえる興行である團菊祭。
江戸の風情を描き出す生世話物を得意とした五代目尾上菊五郎の出世芸となった、
夜の部「弁天娘女男白浪」について少しばかりお話したいと思います。
芝居見物のたのしみのお役に立てればうれしいです。
名場面「浜松屋」をざっくりと
歌舞伎屈指の名作のひとつ
弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)
中でも名場面として知られているのが「雪の下 浜松屋の場」
セリフも聞き取りやすくおもしろみに溢れた場面のため
初めてご覧になる場合でもわかりやすいかと思いますが、
念のため非常にざっくりとした流れをお話しておきます!
舞台は鎌倉は雪の下の呉服店・浜松屋。
若党の四十八(よそはち)に連れられて美しいお嬢様がやってきます。
どうやら来店の目的はお嬢様の婚礼支度のようす…
手代や番頭さんたちがうっとりしつつ接客していたところ、
あろうことかお嬢様はお会計前の品物をスッとふところに。
すなわち「万引き」をしたではありませんか(・_・;)
大慌ての番頭さんたちはお嬢様を取り押さえ、そろばんで額を殴り、
ふところにしまった品物を無理くり出させました。
すると、これが悪いことに万引きではありませんでした!
よそのお店で買ったものだというのです。
きちんと証拠まで突き付けられてしまいました。
おお…これはまずい…嫁入り前の顔に傷も負わせてしまったし、
こりゃどうしたことか…ややや…と、浜松屋の人々は困ってしまいました。
これには四十八の方も黙っていません。
どうしてくれるんだ、お金をよこせ、と大いにもめはじめます。
もうこれは仕方ない…
まとまったお金を渡してどうにかお帰りいただこうよ…というところ
奥の一間から立派なおさむらい 玉島逸当が登場!
「このお嬢さん、男ですぞ。腕に立派な彫り物があるのを見ましたよ。」
と、衝撃の発言で場を凍り付かせます。
えっ…ウソでしょ…と一同ざわつくところへ
お嬢様がその姿にとても似合わぬ口調で
「…もう化けちゃあいられねェ」と悪党・弁天小僧菊之助の正体を顕す…!
…というのが、
名場面「弁天娘女男白浪 浜松屋の場」のざっくりとした流れであります。
実はこの場面の後に、
今月は上演されていないとある大事件がありました。
次回はそのことについてお話したいと思います(´▽`)
参考:新版歌舞伎事典/歌舞伎登場人物事典