ただいま歌舞伎座で上演中の
歌舞伎座百三十年
六月大歌舞伎!
昼の部は「妹背山婦女庭訓」「文屋」「野晒悟助」
時代物・舞踊・世話物という大変バランスの良い狂言立てで見ごたえも抜群です!
「妹背山婦女庭訓」は上演頻度も高く大変有名な演目ですので、
この機会に「三笠山御殿」の場面についてお話いたします。
芝居見物の楽しみのお役に立てればうれしく思います!
モテモテの求女さんをめぐって修羅場に
妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)は、
本当はとても長いお話でもうひとつ悲しいドラマがあるのですが
そちらについては又の機会にお話したいと思います。
三笠山御殿の場面は舞台の上に次々変化があり目にも鮮やか、
エモーショナルでもあるため、元ネタである大化の改新云々のことは置いておいて楽しく見ることができると思います。
しかしながら、お三輪とその想い人・求女さんの来し方について
少し気になる方もおいでかもしれませんので非常にざっくりとお話したいと思います。
そもそもお三輪と求女さんは大和の国・三輪の里というところで出会いました。
お三輪は杉酒屋の娘で、求女さんはたまたまおとなりへ引っ越してきたイケメンであります。
貴族の烏帽子を作る烏帽子折という仕事をしているようです。
二人は深い仲になり、お三輪は「一生一緒にいられますように…」と願って
七夕の夜、糸繰に使う糸車のような道具「苧環(おだまき)」をふたつ使って願掛けをしていました。
お互いの苧環の赤い糸、白い糸が結ばれますように…ということかと思います。
さながら運命の赤い糸といったところです。乙女心ですね。
と、そんなところへ、何やら綺麗でいかにも高貴な感じのお姫様が求女さんを訪ねてくるではありませんか!
しかも求女さんもまんざらでもなく、お姫様を追っかけていくのです。
これは怒り心頭です。
どういうことよー!!!と激情したお三輪は急いで追っていきます。
「女の子の庭訓ちゃんと読みなさいよねっ」などとお姫様につっかかり、
お姫様も負けじと言い返し、ぎゃんぎゃん揉めあいになります。
怒りは求女さんではなくてお姫様に向かうのがおもしろいところです。
しかしどうやら求女さんはお三輪のことは遊びだったようで、
逃げていくお姫様の袖にお三輪が渡した苧環の糸を結び付けて追いかけていきます。
気が収まらないお三輪も、自分の苧環の糸を求女さんの袖に結び付けて追ってゆくのでした…
お三輪は求女さんが藤原淡海という、住む世界がまるで違うお方だったとは知る由もありません。
三笠山御殿の悲しい結末を知っていると、もうそのへんでよせばいいのにと思ってしまいますが、
歌舞伎の女の子というのは本当に恋愛がすべてのようです。
そのエネルギー恐るべしですね!!
参考:新版歌舞伎事典/歌舞伎登場人物事典
今月の幕見席