ただいま歌舞伎座で上演中の
歌舞伎座百三十年
六月大歌舞伎!
夜の部「野晒悟助」は菊五郎さんの粋でいなせな男ぶりに胸が熱くなります!
大変貴重な演目ですので、この機会に少しばかりお話いたします。
芝居見物の楽しみのお役に立てればうれしく思います!
野晒悟助は浮世絵にも
こちらは前回もお話した、野晒悟助の姿を描いた浮世絵であります。
江戸末期のバキバキにとがった浮世絵師・歌川国芳の「国芳もやう正札附現金男 野晒悟助」です。
歌川国芳「国芳もやう正札附現金男 野晒悟助」(ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞)
しかしながら、芝居で野晒悟助を演じる役者を描いた役者絵ではありません。
元ネタは別のところにあります。
そもそも野晒悟助というのは、
戯作者やベストセラー作家、浮世絵師などマルチに活躍していた
江戸時代の文化人・山東京伝の読本「本朝酔菩提全伝」に登場する侠客。
国芳の絵を見てもわかるように、どくろの模様がついた着物を着こなす危険な香りの男です。
当時の髑髏というのは現在のファッションのスカル柄の感覚とは違って、
魔除けなどの意味合いが込められています。
しかしこの国芳の絵、どくろの部分をよく見ると…
かわいい白猫を組み合わせて描かれていますね!
これは「寄せ絵」と呼ばれる手法で、
悪そう、だけどよく見ると少しかわいい、というなんともおもしろいアイデアです。
このセンスは現代においてもたくさんの人の心をとらえていて、
数年前にボストン美術館所蔵分の展示があった際には、美術館が大勢の人でごった返していました。
また展示の機会がありましたらぜひ実物をご覧になってください!
参考:歌舞伎登場人物事典/新版歌舞伎事典