歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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やさしい女殺油地獄 その二 商人のお金が行き交う「節季」

ただいま大阪・道頓堀は大阪松竹座にて上演中の

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市川染五郎改め 十代目 松本幸四郎 襲名披露

七月大歌舞伎

関西歌舞伎を愛する会 第二十七回

襲名披露狂言のひとつである

夜の部「女殺油地獄」について、少しばかりお話したいと思います。

芝居見物の楽しみのお役に立てれば幸いです!

 

商人にとって最も重要な日

女殺油地獄(おんなころしあぶらのじごく)

日本のシェイクスピアと呼ばれる天才近松門左衛門の作品であります。

 

油屋の放蕩息子・与兵衛が金の返済に困り、

人妻のお吉さんを殺めてしまう…という、

現代に置き換えても十分に通用する題材ということもあり

芝居の他に映画などでも描かれている大変有名なお話です。

 

これは江戸時代の商人の町・大坂で実際に起こった

事件を元にして作られたそうなのですが、

舞台となっている時期に特徴があります。

 

それは「節季」と呼ばれるもの。

これは商人にとってなにより大切な決算期のことです。

節季は盆暮れや節句の日に設定されており、

年に1回、2回、または4回ということもあったようです。

落語の「掛け取り」などでもそのようすが知れます。

 

各商店が仕入れや賃借の生産を行い

売掛金を払わねばならない、集めねばならない、という時期で

町には大きなお金が行き交っていました。

中には工面が大変なおうちもあったでしょうし、

儲かっていたとしても集めてまわるのは一苦労です。

大坂は商人の町ですから、

どこもかしこもそれはそれは大忙しであったことだろうと思います。

 

事件は、そんなてんやわんやの節季の前日の夜、

具体的には5月5日の前日である5月4日に起こりました。

与兵衛がお吉さんを殺してしまったその夜、

たまたま油屋のご主人が留守にしていたのも集金という

節季の大切な用事があったからなのでした…

いろいろな状況が重なった上で起こってしまった悲劇なのですね。

 

参考:近松門左衛門『女殺油地獄』で河内屋与平衛がみた夢
湯浅 雅子 元リーズ大学英文学部ワークショップ・シアター客員演出家

日本銀行金融研究所/新版 歌舞伎事典

新版 歌舞伎事典

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公演の詳細

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