ただいま歌舞伎座で上演中の
八月納涼歌舞伎!
第二部「雨乞其角」は歌舞伎の本興行においては初めての上演という演目ですので、
この機会に少しばかりお話いたします。
芝居見物の楽しみのお役に立てればうれしく思います!
明日待たるる その宝船
これまで宝井其角をしつこく掘り下げておりますが、
やはり歌舞伎と其角についてお話するうえで外せないものがひとつありますので、
もう少しお付き合いいただければと思います!
ここまで其角について掘り下げたのは初めてで、なんだかファンになりそうです。
伊達好みなシティーボーイ・宝井其角の弟子のひとりに、
いわゆる「忠臣蔵」で有名な赤穂浪士のひとり・大高源吾がいました。
数年来あたためた本懐である”吉良邸への討入”を翌日に控えた夜、
大高源吾が両国橋を通りかかったところ、
なんと其角にばったり会ったのです!
其角は、立派だったはずの大高源吾がうらぶれて歩いているのをあわれみ
年の瀬や
水の流れと
人の身は
と詠みました。
すると大高源吾はその返歌として
明日待たるる
その宝船
と詠んだのです。
この意味深なお返事を受けた其角は、
はて、宝船とは?良い仕事でも決まったのかなあ…。
と思いましたが、
いや、待てよ…
ハッ、いよいよ討入か…!
と悟ったとか、悟っていないとか…そんな有名なエピソードがあります。
実はこれは完全にフィクションということが
『なぞ解き忠臣蔵』(祖田浩一 東京堂出版 1998)など文献で明かされており、
そもそも弟子ですらなかったといわれています。
実は、このエピソードそのまま歌舞伎にした
「松浦の太鼓」という演目があり、ここでも宝井其角は良い味を出しています!
派手な色男、伊達男という雰囲気ではないですが、
ほとばしる渋み、ダンディズムを感じます。
上演頻度も比較的高い演目ですので、次の上演の際にはぜひご覧になってみてくださいね!
参考:国立国会図書館レファレンス事例/苫小牧民報