ただいま歌舞伎座で上演中の
秀山祭九月大歌舞伎!
昼の部「金閣寺」は歌舞伎の定番といえる演目のひとつですので、
この機会にざっくりとしたあらすじをお話しておきたいと思います。
芝居見物の楽しみのお役に立てればうれしく思います!
舞い散る花吹雪のなか、美女が…
金閣寺という題名は実はお話の中のひとつの場面のことで、
元々は祇園祭礼信仰記という長い長いお話であります。
お話の流れを本当に、ごくごく簡単にお話いたしますと、
1、天下を取ろうとたくらんでいる松永大膳というわるものが、
2、将軍の母と、雪村という絵師の娘・雪姫を金閣寺に幽閉しているのだが、
3、大膳は雪姫に惚れているが従わないので、縄で縛った
4、雪姫がネズミの絵を足の先で描くと本物のネズミが出てきて縄をかじり、
5、無事に開放されましたとさ
というものです。
本当はもっといろいろと複雑なお話がありますので、
少しずつお話していきたいと思います。
②では、横恋慕してくる松永大膳こそが、
我が父親の敵である!と雪姫が知ってしまったところまでお話いたしました。
雪姫は果敢にも大膳に斬りかかろうとしましたが、
非力ゆえ桜の大木に縛り付けられてしまいます。
どんなに身をよじっても、縄はほどけません。
そんななか夫の直信は処刑されることとなってしまい、
縄にかかってさびしく引かれてゆきました…
はらはら舞い散る花びらのなか縛られた美女が身をよじって悲嘆に暮れている…
という嗜虐的な美しさは、この一幕のハイライトであります!!
言語化してしまうとすこし変態っぽく感じますけれども、
実際にご覧になった方には理屈抜きの素晴らしさがお分かりいただけるはずです!
さて、花吹雪の中でなす術もなく悲しみに暮れていた雪姫は、
祖父の雪舟が子どもの頃に起こしたというある奇跡を再現しようと思い立ちます。
その奇跡というのは、こういったものです。
幼い雪舟は預けられたお寺で絵ばかり描いていたので、
住職さんに怒られ、お仕置のため柱に縛りつけられてしまいました。
めそめそと泣きながら、こぼれた涙で絵が描けるぞと思いついた雪舟は、
爪先を器用に使ってネズミの絵を描きました。
それはまるで本物のネズミが動き回って見えるほどに見事だったため
住職さんは思わず追い払おうとしてしまい、
二度とお絵かきをとがめることはなかったのだそうな…という有名な言い伝えです。
雪姫は舞い散る花びらをかき集め、
ご先祖様に念じながら器用にネズミの絵を描いてみます…
するとどうでしょう、どこからともなくネズミが現れたのです!
そして雪姫を縛っていた縄を食い切り食い切り、みごと開放!
雪姫は直信を追ってゆくのでした…。
参考文献:京都国立博物館/新版歌舞伎事典/松竹歌舞伎検定公式テキスト