ただいま歌舞伎座で上演中の
秀山祭九月大歌舞伎!
昼の部「金閣寺」は歌舞伎の定番といえる演目のひとつですので、
この機会にざっくりとしたあらすじをお話しておきたいと思います。
芝居見物の楽しみのお役に立てればうれしく思います!
東吉の活躍でめでたしめでたし
金閣寺という題名は実はお話の中のひとつの場面のことで、
元々は祇園祭礼信仰記という長い長いお話であります。
お話の流れを本当に、ごくごく簡単にお話いたしますと、
1、天下を取ろうとたくらんでいる松永大膳というわるものが、
2、将軍の母と、雪村という絵師の娘・雪姫を金閣寺に幽閉しているのだが、
3、大膳は雪姫に惚れているが従わないので、縄で縛った
4、雪姫がネズミの絵を足の先で描くと本物のネズミが出てきて縄をかじり、
5、無事に開放されましたとさ
というものです。
本当はもっといろいろと複雑なお話がありますので、
少しずつお話していきたいと思います。
③では、雪姫が爪先で描いた絵から本物のネズミを出現させ、
縄を食い切らせて処刑されんとしている夫を追いかけてゆくところまでを
お話いたしました。
そういえばさきほどこの金閣寺にやってきて、大膳に召し抱えられた男がいましたね。
此下東吉といういかにも切れ者という風情の男でした。
彼は慶寿院を救い出すためにと信長が送りこんだ者であり、
大膳の家来になったのは見せかけでありました。
ここからは東吉がそのスマートさを発揮して活躍するパートであります。
大膳が持っている宝刀「倶利伽羅丸(くりからまる)」は、
もともと狩野家に伝わる大切な宝剣。
雪姫にとってはこの上なく大切なものですので、
東吉はこれを奪い返して雪姫に渡し、夫直信の元へと向かわせます。
歌舞伎のお芝居には、おうちに伝わる宝剣や掛け軸、香炉などが
それはそれは重要なアイテムとして出てくることがよくありますよ。
そして、舞台上の立派な金閣寺がゴゴゴと変貌、
上の階のようすが見えるようになります。この大道具も見ものです。
ヒーローのように東吉は上の階に登り、みごと慶寿院を救出するのでした!
怒りにふるえる大膳に「ふたたび戦場で会おう!」とカッコよく宣言して、
金閣寺は幕となります。
ここで大膳をこてんぱんにやっつけてからではなくて、
余韻を残して幕となるのが美しいところだなぁと感じます!
とにかく贅沢で美しいこの一幕、初めてご覧になる方にもおすすめです。
参考文献:新版歌舞伎事典/松竹歌舞伎検定公式テキスト