今月、歌舞伎座にて上演されていた秀山祭九月大歌舞伎!
夜の部「俊寛」は、とにかく素晴らしい一幕でしたね。
せっかくですのでこの機会に、
演目に登場した歌舞伎の演出用語についてごく簡単にお話したいと思います。
次回の芝居見物の際に、何らかのお役に立てれば幸いです!
小憎たらしい敵役「赤っ面」
俊寛たちが流刑になっている鬼界ヶ島にどんぶらこと大きな船がやってきて、
なにやら嫌~な感じの、くりくりした白髪頭のおじさんが降りてきて、
やいやいと感じ悪く俊寛をどやしていたと思います。
あの人物は瀬尾(せのお)という名前でして、
平清盛の腹心であったさむらいだそうです。
他の演目でも、ああした嫌な感じのおじさんとして登場します。
瀬尾の顔だちをいまいちど思い出してみますと、
なにやら赤かったなあと思われませんでしょうか。
あの赤いお顔は歌舞伎のお約束「赤っ面(あかっつら)」の目印であります。
赤っ面というのは、時代物の芝居に登場する敵役のこと。
とはいっても国をのっとる謀反を企むような大物の悪人というよりは、
誰かの家臣であったりとやや小物です。
憎らしい口をたたいたり、良い人を簡単に殺したりする
どちらかというと単純な悪さが特徴です。
とにかく主役に嫌なことを言ってやろう、不快感を与えてやろうと血がたぎっていて、
血圧が上がってカッカしているように見えてきますね。
この敵役としての赤っ面というのは上方から始まった演出であります。
江戸の歌舞伎では正反対に、赤い顔は勇猛果敢な立派な男の人の約だったそうですが、
そのうち敵役で統一されていったということです。
並んでいるさむらいの中に赤い顔の人がいれば、
もしかしたらこの人はこれから嫌なことをするかもしれないなと
心構えができますね(´▽`)
参考文献:新版歌舞伎事典/歌舞伎登場人物事典