本日26日は歌舞伎座にて上演されていた吉例顔見世大歌舞伎と、
東京は浅草・浅草寺にて上演されていた平成中村座十一月大歌舞伎の千穐楽でした!
\おめでとうヽ(。>▽<。)ノございます/
花道を駆け抜ける勘三郎さんの気配
本日は千穐楽ですので、ネタバレを避けるため
芝居見物の折には伏せていたことをメモしておきたいと思います。
平成中村座夜の部「弥栄芝居賑(いやさかえしばいのにぎわい)」の
演出についてのお話です。
「弥栄芝居賑(いやさかえしばいのにぎわい)」は、
江戸時代の芝居小屋にタイムスリップしたかのようなていでの口上から始まる一幕でした。
江戸の猿若町にある芝居小屋、中村座で追善興行が行われているという設定です。
平成中村座の座元として勘九郎さん、その女房として七之助さん、
二人のご子息と鶴松さんは若太夫として、
そして出演者の方々が役者や男伊達・女伊達などなどの姿で登場し、
木戸前にてにぎにぎしく挨拶を交わします。
そしてずらりと並んだ出演者たちは、
中村座の芝居を見に行くという流れで引っ込んでいきます。
…と、ここまではよくある芝居前です。
しかし今回は、中心人物である勘九郎さんと七之助さんまでもが、
「どんな芝居が見られるのだろう」などと話しながら中村座へと入っていってしまうではありませんか。
あれあれどうなるのだろうなと不思議に思っていますと、
暗転し、勘三郎さんの名場面をぎゅっと詰め込んだ映像が始まりました。
歌舞伎座ですとなかなかそういった追善というのは見られませんから、
うわぁ懐かしいなとひとつひとつの芝居を噛みしめておりました。
映像の終盤はシネマ歌舞伎化もされている勘三郎さんの珠玉の名演「春興鏡獅子」です。
弥生自身の緊張感が伝わってくるような可憐な踊りに感動しているうち
目覚めた獅子に引かれ弥生は引っ込んでゆきました。
役者のいない舞台の映像、そしてじわじわとヒートアップしていく音楽。
中村座全体に獅子の精が登場する前の独特の緊張感が漂います。
すると、突如 \中村屋!/の大向こうと共に揚幕が引かれ、チャリン!という音が。
そんなことはあるはずもないと頭ではわかっているのに、
「あっ、勘三郎さんだ!!」と直感的に感じ、あまりのうれしさに涙が溢れてきました。
そしてそのまま、花道にひとつのスポットライトが照射され、
まるで獅子の精になった勘三郎さんが駆け抜けていくかのような速度で
舞台へ向かって一直線に光が流れていったのです。
この演出は本当に鳥肌が立ってしまうくらいに感動いたしました。
まるで勘三郎さんが舞台にいるときの気配そのものがそこにあるようで、
数年間の喪失感が一気に埋まっていくかのような体験でした。
しかしそれはかえって、空虚を突きつけられるようでもあり、
今はまだこうして覚えているけれど、自分の中の記憶が薄れたときには本当に
もう二度と見られなくなってしまうんだなと覚悟のような思いが湧いてきました。
今見ることができる芝居にも終わりがあることを覚悟しながら
ひとつひとつの芝居を全力で楽しみ、その記憶を積み重ねていきたいと改めて思った次第であります。