ただいま歌舞伎座で上演中の
十二月大歌舞伎!
夜の部「阿古屋」は女形で最も難しい役の一つといわれるもの。
舞台の上で琴、三味線、胡弓を実際に演奏しながら複雑な心情を表現します。
Aプロでは人間国宝である玉三郎さんが
Bプロでは20代、30代の若手女形梅枝さん・児太郎さんがお勤めになっています。
大変貴重な機会ですので、少しばかりお話したいと思います。
芝居見物のたのしみのお役に立てればうれしいです!
ごく限られた方が受け継いだ特別な役柄
阿古屋(あこや)は壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)という
全部で五段ある芝居のうちの三段目にあたる部分です。
壇浦兜軍記はもともと人形浄瑠璃の作品であり、
1731年(享保17)9月に大坂は竹本座にて初演されました。
これが評判を呼び、すぐに歌舞伎化されたということです。
本当は五段あるはずなのですが、
現在はもっぱら三段目の「阿古屋」(阿古屋の琴責)の部分が上演されるので、
「阿古屋」という呼び名で通っているわけです。
戦後の歌舞伎界においては、女形の十二代目仁左衛門、
六代目歌右衛門へと伝承されて当たり芸として長らく上演され
1997年に玉三郎さんへと受け継がれ今に至ります。
素晴らしい女形の役者さんがおおぜいいらっしゃる中で、
これだけ限られた方しかお勤めになっていないという特別な役なのです。
お琴と三味線、胡弓の三つの楽器を演奏しながら歌うという
演奏スキルの面で難役だというのももちろんですが、
気高い遊女のつよい心と、恋人を思い案じる心を同時に表現するという
心情表現の面でも大変難しいものなのだそうですよ。
お話の流れや、そもそもこの阿古屋というのはどんな人物なのか?ということは
次回以降にお話したいと思います!
参考文献:新版歌舞伎事典