歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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歌舞伎のことば:江戸のヒーロー町火消の活気「木遣り始め」

にぎにぎしいお正月芝居も無事に楽日を迎えました。

昨日は江戸時代の大坂におけるお正月についてお話いたしましたが、

今日は現代の歌舞伎座における恒例行事についてひとつお話してみたいと思います。

気が早いですが、来年の初芝居のご参考にどうぞ!

歌舞伎座ロビーで行われる「木遣り始め」

お正月の歌舞伎座での恒例行事に「木遣り始め」というものがあり、

例年1月6日昼の部の幕間に、玄関の大間にて行われています。

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国立国会図書館デジタルコレクション

 

これは「江戸消防記念会」なる江戸の火消し伝統文化伝承の会の

第一区六番組の方々が歌舞伎座へやってきて

威勢の良い纏振り木遣り唄を披露してくださる…というものです。

 

「木遣り」というのはそもそも木を運ぶという意味。

重機などのない時代に大木を運ぶ時、みんなの掛け声のようにして使われていた唄が、

木遣り唄」と呼ばれ全国的に伝承されてきました。

唄によって大勢の力がぴったりと揃えば、

どんな重いものでも人の手で運ぶことができたということです。

大きなお寺などを見ますとどうやって建てたのかな…?と不思議に思いますが、

こうした知恵が活かされていたんですね。

 

お寺を建立したり新しいおうちを建てたりすることはおめでたく喜ばしいことですから、

木遣り唄」自体もおめでたいものとされるようになっていきました。

 

そんな木遣り唄が江戸の中頃になると鳶職人のお兄さんたちに唄われ

火事の絶えない江戸の町で大活躍したいわば「江戸のヒーロー」、

みんなが憧れた威勢の良い町火消のお兄さんたちが鳶職人の中から出現…

町火消木遣り唄が繋がり、伝承されていったというわけです。

 

町火消といえば歌舞伎の世界においても、

盲長屋梅加賀鳶」「神明恵和合取組(め組の喧嘩)」などの演目に登場します。

みな威勢が良く、江戸の町の活気が伝わってくるような芝居です。

 

江戸の町火消の人々はド派手な和彫りの総入れ墨をしていることが多いのですが、

この風俗は肌を丸出しにして働くことへの恥じらい、美意識の表れであったようです。

江戸の男性というのはとにかくカッコよさへのこだわりが強かったのですね。

上演の際には、登場人物の入れ墨の衣裳にも注目してみてくださいね。

 

そんな江戸の象徴ともいえる町火消しの文化「江戸の鳶木遣」は

昭和31年3月3日に東京都技芸として無形文化財に指定されており、

江戸消防記念会の方々が大切に伝承されています。

 

そんな貴重な技を目の前で拝見できる「木遣り始め

歌舞伎座での近年の日程を調べてみますと下記の通りでした。

2019年1月6日(日)

2018年1月?(不明)

2017年1月5日(木)

2016年1月6日(水)

2015年1月6日(火)

1月6日が恒例のようですが1月5日の年もあったもようです。

来年ご覧になりたい方は、こちらのページと併せて要チェックですね!

www.edosyoubou.jp

 

参考文献:江戸消防記念会/大辞林/大江戸まるわかり事典

大江戸まるわかり事典

大江戸まるわかり事典

 
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