歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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やさしい盛綱陣屋 その七 三婆のひとつ「微妙」

ただいま歌舞伎座で上演されている

三月大歌舞伎

夜の部「盛綱陣屋」は数ある演目の中でも名作として知られていますので、

この機会に少しばかりお話したいと思います。

芝居見物の楽しみのお役に立てれば幸いです!

三婆のひとつに数えられる難役

盛綱陣屋(もりつなじんや)は正式な題名を

近江源氏先陣館(おうみげんじせんじんやかた)といって、

1769年(明和6年)の12月に大坂は竹本座で初演された人形浄瑠璃の演目です。

歌舞伎ではその翌年の1770年(明和6年)5月に、同じく大坂にて初演されています。

 

芝居の設定は鎌倉時代でありながら実は大坂の陣を描いたものであり

佐々木盛綱・高綱兄弟は真田信幸・幸村兄弟を、

北条時政は徳川家康をモデルとしています。

 

息子たちは敵味方に別れ、孫には切腹を迫らなければならないという

大変苦しい役どころが盛綱の母・微妙(みみょうと読みます)さんです。

 

武家の名のためには命をも惜しまない武士の母です。

盛綱の切なる頼みを受けて可愛い孫の小四郎くんに腹を切るよう勧めるものの、

命乞いをされてはとても討つことなどできないのです。

しかし武家の宿命を引き受け、そんな孫をも刀を抜いて追い回す苦しさ、

強さと慈愛がひしひしと感じられる役どころであります。

 

この役柄は歌舞伎の時代物に出てくるおばあさん役「婆(ばば)」の中でも

もっとも重要かつ難しい役どころのひとつとされ、

三婆(さんばばあ)」に数えられています。

 

三婆はほかに

菅原伝授手習鑑」の覚寿、「本朝廿四孝」の越路などがあります。

どの役も、家を守るためには犠牲を惜しまない大変強い女性です。

 

 

江戸時代にこうした芝居や浄瑠璃を見ていた庶民の方々は、

武士も大変なんだなぁ~とほろほろ涙していたのかもしれませんね。

 

参考文献:歌舞伎登場人物事典/新版歌舞伎事典/日本大百科全書/世界大百科事典

歌舞伎登場人物事典(普及版)

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