ただいま歌舞伎座で上演中の
七月大歌舞伎!
昼の部「歌舞伎十八番の内 外郎売」では、
海老蔵さんのご子息の勸玄さんが見事な言立てを披露され
メディアなどでも大きな話題になっていますね!
これ以上ないほどの機会ですので、
このすえひろも外郎売について少しばかりお話してみます。
芝居見物のお役に立てればうれしく思います!
十二代目の功績!言い立ての復活劇
歌舞伎十八番の内 外郎売(ういろううり)は、
1718年(享保3年)のお正月に江戸は森田座で上演された
「若緑勢曾我(わかみどりいきおいそが)」をルーツとする演目。
スーパースターの團十郎が薬箱を背負い、その滑舌のよさを発揮して
宣伝口上であるところの「言い立て」をスラスラと澱みなく聞かせる…
というところが最大のおもしろさであったわけですが、
なんと肝心の「言い立て」が失われてしまった時代があったということは
その二でお話しいたしました。
シカゴ美術館 勝川春章 二代目市川海老蔵 「外郎」
「言い立て」が一時は失われてしまったとなると、
今月勸玄さんが披露なさっているのは一体どういったわけなのでしょうか。
実は現在上演されている「歌舞伎十八番 外郎売」は
勸玄さんのおじいさまである十二代目の團十郎さんが復活に取り組み
劇作家の野口達二さんが練り上げ
昭和55年5月に上演されたものがはじまりなのであります。
團十郎というお名前が次から次へと登場して混乱して参りましたので、
このあと、海老蔵さんのお父様で勸玄さんのおじいさまの十二代目のことは
リアルタイムの親しみをこめ團十郎さんと申したいと思います。
海老蔵時代の團十郎さんは、
お父様の十一代目團十郎が海老蔵時代に上演した
昭和15年の「ういろう」には肝心の言い立てがないことから、
なんとか復活できないものかと腐心されていたそうであります。
しかし、言い立てのセリフはわかっても、
実際に上演されていた江戸時代には当然ビデオも録音機もないわけですから
一体どのようにしゃべればいいのか見当もつかなかったとのこと…
そんななか突破口となったのは
なんと外郎売の言い立てをする「講釈師のテープの断片」だったそうであります。
ここから野口達二さんが台本を執筆し膨大な言い立てをちょうどいい長さにアレンジ、
二代目團十郎時代の芝居小屋の風情を感じさせる大道具とともに
みごと歌舞伎十八番の「外郎売」として昭和55年5月の上演を迎えたのでした。
その後は團十郎さんの十二代目團十郎襲名披露と
海老蔵さんの初舞台はじめ繰り返し繰り返し上演されて、いまに至るわけであります。
初演の1718年から実に300年の時を経て
勸玄さんの素晴らしい言い立てを聞くことができること、
その壮大なストーリーに感動してしてしまいますね。
大きなお声や滑舌の良さという
勸玄さんの役者としての魅力を最大限に堪能できる演目として
「外郎売」がまさに本来の輝きを持って上演されているんだなあと思うと
團十郎さんの功績への感謝の思いでいっぱいになります!
参考文献:新版歌舞伎十八番/歌舞伎 入門と鑑賞/新版歌舞伎事典/歌舞伎 家・人・芸 ほか
- 作者: 十二代目市川團十郎
- 出版社/メーカー: 世界文化社
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