先日のお話ですが歌舞伎座へ出かけ
八月納涼歌舞伎の第一部を見てまいりました!
第一部は古典の名作「伽羅先代萩」と、お化け大集合の楽しい舞踊「闇梅百物語」の二本立て。
伽羅先代萩では七之助さんが女形最高峰の役 政岡を初役でお勤めになりました。
当たり前ですが初役は人生で一度切りですから観客としましてもぐっと気合が入ります。
くわえて、千松・鶴千代君は甥御さんである勘太郎さん・長三郎さんという配役…
甥御さんたちをかわいがる「おじじ」という愛称の七之助さんのご様子を
毎年のドキュメンタリー番組で拝見しているためにたまらないものがあります。
今回の「伽羅先代萩」はそのような前情報を抜きにしても
千松と鶴千代君に対峙する政岡の母性が感じられて涙してしまいました…。
特に八汐が千松を手にかける場面では、
言葉でなんと表現してよいやらわかりませんが、
政岡の姿から極限状態にあるお母さんの心が見えました。
カッと目を見開いてその場面をその目でしっかり見据えているようでありながら、
それをダイレクトに感じる心そのものをシャットダウンさせて心を守っているような、
それでいて表には見えないところで強烈な感情をたぎらせているような…
一言では言い表せませんが、女性として深く共感できる複雑な感情です。
自分自身の心が成熟したという側面もあるのかもしれません。
何度も見ている「伽羅先代萩」で、こうした感情になったのは初めてでした。
そして勘太郎さんの千松はもちろんのこと
昨年の平成中村座ではじっとするのが難しかった長三郎さんが
ぴしっと鶴千代君をお勤めになっていること、
お二人のお声もよく聞こえたことに大変感動いたしました…!
今後女形として一生涯にわたり芸を磨かれる七之助さんの初役の政岡、
そこに勘太郎さんの千松・長三郎さんの鶴千代が加わるというのは
まるで小説を読むようにドラマチックな配役であり、
観客にとっても生涯忘れずにいられる本当にしあわせな体験だなあと噛みしめております…
そういった背景を噛みしめながら芝居を見ることができるのも
歌舞伎のおもしろさのひとつだなあとつくづく思います。