歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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2019年をふりかえり…

早いもので2019年も今日でおわり…

令和という新しい時代を迎え、5月に一度気持ちを新たにしておりますので、

なにやら感覚的には2年分を過ごしてきたような気がいたします。

 

今年も芝居に忙しく、芝居の楽しい一年でありました!

もうすでに2月3月4月の芝居のことを考えてしまっており、

一年間の思い出をひとつひとつ振り返るのもなかなか難しいのですけれども、

今でも忘れられない作品を5つばかり挙げてみたいと思います!

2020年忘れられない5つの作品

6月の封印切(歌舞伎座)

まず思い出されるのは六月の歌舞伎座で拝見した封印切

仁左衛門さんの忠兵衛に愛之助さんの八右衛門、

孝太郎さんの梅川、そして秀太郎さんのおえんさんと

このすえひろの大好きな関西の香りが濃厚な一幕でありました。

忠兵衛の手からシャラシャラシャラ…と小判が零れ落ちるさま、三味線の音、

そしてその瞬間の忠兵衛の表情が、今でもスローモーションで思い出されます。

人の体は絶望というものをあれほど美しく描くことができるのかと

義太夫狂言で描き出される世界の魅力を改めて実感できたように思います。

 

7月の渡海屋・大物浦(大阪松竹座)

夏には毎年恒例の大阪松竹座での関西歌舞伎を愛する会公演に出かけ、

渡海屋・大物浦を拝見できたことも素晴らしい思い出の一つです。

これはもう拝見できる機会のない舞台なのではないかと思っていたため、

もう一度拝見できるということがあまりにも幸せで、脳天が沸きあがりそうでした。

仁左衛門さんは芸談で、

知盛の心は解放され召されていくというようなことをおっしゃっていますが、

その言葉の通りに、悲壮でありながらも浮かび上がるような崇高さ、

十字架にかけられたキリストの宗教画のような、あるいは仏画のような美しさを感じます。

安徳帝から仇に思うな知盛と言われて、知盛がふっと人間を超えてしまう瞬間は、

何度拝見しても涙が止まらなくなってしまいます…思い出し泣きをしそうです…

 

9月の勧進帳(歌舞伎座)

そしてなんといっても思い出されるのは、

仁左衛門さんが弁慶をお勤めになった秀山祭であります。

こちらもまた、見ることが叶わないであろうと覚悟していた一幕であり、

勧進帳好きとしても頭がかち割れそうなほどに衝撃的な世界でありました…!

これまで弁慶という役柄に感じていたのは愛らしさと猛々しさの共存するダンディズムでしたが、

仁左衛門さんの弁慶は美しく崇高で、勧進帳の世界がより奥行きを持って感じられたのであります。

富樫を見送った後にふと力が抜け、金剛杖がコトン…とかすかな音を立てる瞬間など、

全てのシーンはまるで一編の映画を見ているような体験でありました…

これは本当に、伝説として語り継がれているのも納得であるとしみじみ感じました。

 

ナウシカ歌舞伎

そして、記憶に新しいものにはなりますが、

芝居仲間と大いに語り合い、楽しい時間を過ごしたのがこの作品です。

「風の谷のナウシカが歌舞伎になる」というニュースが報じられた際には驚き、

一体どんな作品になるのだろうかと不安に思いましたが、想像以上に歌舞伎、

それも古典歌舞伎であり、古典歌舞伎の可能性に心の底から感動いたしました。

特に初日に拝見した夜の部の所作事が素晴らしく、忘れられません…

お怪我により演出が変わったことにはさぞご無念と心を痛めました。

所作事を含めた昼夜の完全版にて再演があることを心から願っております。

またその際には、どうか七之助さんのクシャナ殿下でありますようにと切に願っております…!

 

いだてん~東京オリムピック噺~

歌舞伎ではありませんが、なんといっても今年一年の大いなる楽しみであったのは、

勘九郎さんが主役のひとり金栗四三をお勤めになった大河ドラマ「いだてん」であります!

毎週毎週、各話を数回ずつ拝見しては都度笑い泣く、素晴らしい時間を過ごしました。

特に女子スポーツの発展、戦前戦後の諸外国との関係については、

教科書やこれまでの戦争関連ドラマでは知り得なかった事柄ばかりで深く考えさせられるものがありました。

私は歴史にめっぽう弱く、大河ドラマを最後まで完走できた試しがありませんでしたが、

「いだてん」を通じて初めて歴史というものの重みと温かみを感じたように思います。

時代を変えるような英雄だけではないごく普通の人たちが、

一人一人懸命に生きてきた日々の上に今があるのだなという、

当たり前のことに改めて気づくことができました。

今後は勘九郎さんの歌舞伎でのご活躍を非常に楽しみにしております!

また、宮藤官九郎さんの新作の歌舞伎もぜひ拝見したいです!

 

余談ですが、先日Mー1グランプリの決勝で

すゑひろがりずのお二人のネタを拝見しうれしくなりました。

私もすえひろですので、僭越ながらお二人には妙な親しみを覚えております。

伝統芸能風漫才でのご活躍により、本当の伝統芸能に興味を持たれる方が増え、

いろいろとめぐりめぐり結果的に芝居仲間が増えることを願っております。

 

ブログをお読みいただいた皆様には、本年中も大変お世話になりました。

来年も引き続き運営してまいりますので、芝居見物のお役に立てればうれしく思います。

来年はどんな芝居が待っているのでしょうか。

楽しみに今日は休みたいと思います!おやすみなさいませ。

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