早いもので二月も今日でおわり…
今月は歌舞伎座公演だけでなく、文楽やナウシカのディレイビューイングなどさまざま楽しんでまいりました。
なんだかもう仁左衛門さんと菅原道真の違いがよくわからなくなって混乱してしまい、
太宰府天満宮ばかりでなく亀戸天神や湯島天神にも仁左衛門さんの丞相さまがいらっしゃるような気がしてきて、
どうにも気持ちが収まらないので梅のお菓子を食べる、梅の絵を描くなどして過ごしております…
「賤しからざる世の営み」
楽しみは数々ありましたが、やはり何度も歌舞伎座へ出かけて拝見した
菅原伝授手習鑑 筆法伝授・道明寺が忘れられません。
幕切れ、花道を歩んでゆく菅丞相の頬を伝う涙が今も目に焼き付いております…
舞台の上においでなのは確かに仁左衛門さんなのですが、
どこか遠くの世界におられる別の方を拝見しているような不思議な思いを抱き、
お姿が現れるたびにこちらの背筋もピンと伸びてしまうような崇高さを感じました…
あの感覚はもう、どんな言葉を並べても表現できないものなのだと思います。
素晴らしい、すごい、など賞賛の言葉はいくらでも浮かびますが、
並べれば並べるほどあの美しさから遠ざかってしまうようで、胸にしまっておきたくなります。
特に深く感じ入ったのは筆法伝授で源蔵と対面し、
寺子屋を営んでいると知った後の「賤しからざる世の営み」といういたわりの言葉。
丞相さまのこの一言で源蔵はどれほど救われたことかと思いめぐらし、涙せずにはいられませんでした…
この対面を経た上であの悲しい寺子屋の場面がある…と改めて噛みしめますと、
梅玉さんの源蔵と時蔵さんの戸浪の素晴らしさも相まってより感動が深まるようでした。
今後寺子屋の場面を拝見するときには必ず今月の舞台が思い起こされるはずで、
なんて幸せなことなのだろうとつくづく思います。
今月は文楽を拝見する機会にも恵まれ、
国立劇場 第三部 傾城恋飛脚 新口村・鳴響安宅新関 勧進帳の段と
赤坂文楽 関取千両幟を堪能してまいりました!
鳴響安宅新関は歌舞伎でもおなじみの勧進帳の文楽版といったところで、
太夫と三味線がそれぞれ7人ずつずらりと床に並んださまが圧巻でありました!
床とお人形のどちらも見ようとすると目が離れてしまいそうなボリューム満点の舞台であります。
ハッ…脳の血管が…まずいのではないか…!とハラハラしてしまうほどの熱量、
弁慶の三味線をお勤めになっていた藤蔵さんと鼓の音の掛け合いなどは脳が沸きあがるほどに興奮し、
これまで拝見した勧進帳の名舞台の数々を頭に思い浮かべながら涙いたしました。
歌舞伎ではお馴染みの名シーン「判官御手」がない点が気になりましたが、
あのスローモーションのような瞬間が美しく映えるのは役者さんだからこそなのかなあと興味深く思われました。
関取千両幟では鶴澤藤蔵さんと鶴澤清志郎さんの「曲弾き」がありまして、
胴を太鼓のように叩いたり三味線のバチが飛んだりと驚きの連続でした!
次回の赤坂文楽は出世景清の通しだそうですのでこれもまた非常に楽しみです。
そして今月は新作歌舞伎 風の谷のナウシカのディレイビューイング前半も拝見いたしました。
映画館の大画面のおかげで、オペラグラスの性能の限界で劇場では見ることができなかった衣装の細かな部分などもばっちりと見え、素晴らしい音楽もしっかりと堪能することができ興奮の極みでございました。
演出に関する新たな発見もたくさんありましたので、ぜひ円盤化していただきたいものです…
また役者さんたちのお顔をアップで見ることができるのも、映画館ならではのメリットですね!
菊之助さんナウシカのオレンジアイシャドウの見事なグラデーションや、
七之助さんクシャナの跳ね上げアイラインなど、
メイクの参考になる情報の宝庫でもあったため目を皿のようにして拝見しました。
そのような女性は私ばかりではないはずであり、江戸時代さながらであるなあとワクワクいたしました。
つい長くなってしまいましたのでこの辺りでお話を結びたいと思いますが、
来月は無事に芝居の幕が開くのでしょうか…
三月以降もたくさんのチケットを確保しておりましたため、
一気に先行きが読めなくなってしまいうろたえております。
今後の各方面への影響が非常に心配であり、ついつい憂鬱な気持ちになってしまいますが、
また元気で愉快に劇場へ出かける日を迎えられるよう、
自分自身も健康に充分注意してこの難局を乗り越えたいと思います。
皆様も何卒お気をつけなされてくださりませ…