歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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【読書録】「花のひと―孝夫から仁左衛門へ」宮辻政夫著

歌舞伎公演の中止に伴って空いた時間で、楽しみにして買ったまま手つかずの本や、読んだものの内容をすっかり忘れている本などをもりもりと読みまくり、気力を奮い立たせている昨今です。

備忘録を兼ねてそのなかから何冊かご紹介いたしますので、何らかのお役に立てればうれしく思います。 

「花のひとー孝夫から仁左衛門へ」宮辻政夫著

本日は、2020年3月14日!片岡仁左衛門丈76歳のお誕生日ですね!!!!!!!!

なんとおめでたい日なのでしょうか…!!当日の芝居見物は叶いませんでしたが、仁左衛門さんと同時代を生きていられることのよろこびで胸がいっぱいであります!

 

今回はそんなお誕生日を記念して、お姿見たさを紛らわすために数年ぶりにじっくりと読み返した書籍をご紹介いたします!

演劇評論家 宮辻政夫さんの「花のひとー孝夫から仁左衛門へ」

十五代目仁左衛門の襲名から一年あまり、毎日新聞出版1999年発行の一冊です。

花のひと―孝夫から仁左衛門へ

花のひと―孝夫から仁左衛門へ

  • 作者:宮辻 政夫
  • 発売日: 1999/09/01
  • メディア: 単行本
 

1998年の襲名披露興行に合わせた企画として、1997年11月5日から1998年4月15日まで大阪本社発行版の毎日新聞夕刊に掲載された連載をまとめた書籍であります。

仁左衛門さんにまつわる書籍やインタビュー本はたくさんありますが、こちらは襲名披露当時の時代感覚がわかりやすく、なおかつ新聞コラムらしく親しみやすいタッチで書かれた読みやすい一冊。

舞台写真プライベート写真などもたまらず、ふとした時に手に取ってパラパラと読むだけでも絶大なる癒しの効果を発揮するこのすえひろの宝物です。

 

具体的な内容としましては、

十五代片岡仁左衛門襲名までの舞台裏

幼少期

関西歌舞伎の衰退と十三代の「仁左衛門歌舞伎」

ご夫妻のなれそめから結婚生活

東京に進出した際に過ごした不遇の時代

孝玉コンビが一世を風靡

生死の境をさまようほどの大病と闘病生活

十三代の最晩年

病からの復活と襲名披露

というようなトピックが並んでいます。

 

今では名優として世に知られ人間国宝にまでなられた仁左衛門さんにも不遇の時代や、命を脅かす危機が何度か訪れており、仁左衛門さんご自身のお力はもちろんのこと、その時々を支えたご家族、歌舞伎界の方々やご贔屓の方々など様々な方の存在によって現在があるのだなあ…としみじみ思います。

特に、関西歌舞伎不遇の時代と襲名披露を控えた時期の大病、十三代の最期などは、涙なしには読めません。私のような若輩者がこの目で仁左衛門さんのお芝居を拝見できること自体が、もはや奇跡ではないか…と、あまりのありがたさに拝むような思いで目頭が熱くなってしまうのです。

 

また、この本が魅力的なのはそういったシリアスな内容ばかりではなくて、ほっこりとするようなプライベート情報も満載なところです。

自分の得意ジャンルで99人を相手に戦う「99人の壁」というクイズ番組がありますが、もし「片岡仁左衛門」のジャンルで出場するとしたらここからの出題がかなり多くなるのではないか…と思われるほど、超マニアックな情報もたくさん盛り込まれています。

 

例えば…

Q「7歳の時『桜鍔恨鮫鞘』の舞台に立ち、十三代目にねだったご褒美は」

A「長ズボン」

Q「十七代勘三郎に『松浦の太鼓』を教わった際のお礼は」

A「Lサイズのセーター」

Q「製造中止になっていたがメーカーに頼んで襲名披露の配り物に加えられた愛用品は」

A「赤と黒の旅行用目覚まし時計」 

というような具合。この具体性がたまりませんね。

 

芸談系の本では決して書かれることのない細かな情報が山ほど盛り込まれていて、古い舞台写真や舞台映像の中でしか伺い知れない名優たちとの交流のようすなどを想像できるたのしみもあります。

 

ファンの方には今更ご紹介するまでもないお馴染みの一冊かと思いますが、もしも未読の方がいらしたらぜひにとおすすめいたします!!

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