歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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歌舞伎のことば:そもそも「名跡」って

前回、「團十郎」という名跡のもつパワーについてお話いたしましたが、名跡とはそもそも何なのかという点についてもお話した方が良いように感じました。

詳しくお話しはじめますとどんどん複雑になってしまいますのでごく簡単なものにとどめますが、近ごろ歌舞伎に興味を持たれた方の何らかのお役に立てればうれしく思います。

前回

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イメージや夢まぼろしごと名跡を背負う

そもそも名跡(みょうせき)とは、とある「名前」が別の人に代々受け継がれていく場合にあって、その名前のことを指すことばであります。

現代も歌舞伎をはじめとする伝統芸能の世界、おすもうの世界、また歴史ある商家や職人さんなどの世界でも綿々と続いているもので、江戸時代では遊女の社会においても行われていたそうです。

 

なかでも歌舞伎界の名跡が特に興味深く特別感を醸し出しているのは、例えば児太郎・福助・歌右衛門というように名前が徐々にスケールアップしていく場合がある点かと思います。

さらに「多くの場合は世襲」という要素がプラスされることで、どなたがどの名跡を継ぐのかしら…、大きな名跡を襲名されて大出世ね…というような話題を呼ぶ効果も加わり、永続的に人々の興味関心を集め続けるシステムが出来上がっているといえます。

 

歌舞伎界では、江戸時代からさまざまな名優が君臨。

一世を風靡する大人気のスターとなった方やものすごい名人として大評判を呼んだ方など、各時代に強烈な個性を持つ方々が出現しました。

となりますと当然ながら、「〇〇はすごかった、最高の役者だ」というイメージが人々の間に生まれます。

そして時代を経て○○という名跡を襲名する方が現れますと、

「先代〇〇はこんな役者だった」あるいは「先代○○はこんなにすごかったらしい」という夢まぼろしのような期待感、ある意味では先入観へと変化していくわけです。

そういった先行イメージによる重みが名跡を継いだ方にとってプラスに作用し先代を超える名優になった場合もあれば、マイナスに作用してしまう場合もあり、悲喜こもごもであったようです。

 

とはいえ現代を生きる多くの人々にとって、このさき名跡を襲名をする予定はないわけでして、その感覚というのはなかなかイメージしづらいものがあります。

そこで当代の芝翫さんが八代目襲名の際にインタビューでおっしゃっていた、下記のような意味合いの言葉をご紹介いたします。

自分個人に芝翫という名前がついたのではなくて、芝翫という会社の社長になったようなもの。

この時代の社長として事業成績を上げ、新規開拓に取り組み、さらに事業を継承しなければならない。

これは、一般的な社会人としてかなりわかりやすいものではないでしょうか。つくづく大変なお仕事です。

 

役者さんによっては「大きな名跡の襲名」ではなく、本名や家に残る過去の役者の幼名などを名乗り続けて鍛錬や活躍を重ね、大きな実績を積み評判を呼ぶことによって「名前を大きくする」という場合もあります。

いずれにせよ名を背負って舞台に立つという重みを想像するに、猛烈なものがあります。何かを背負って人前に立っている方の姿というのは、それだけで胸を熱くしますね。

「名跡」がもっているストーリー性のおかげで、歌舞伎は何倍もおもしろくなっているのではないかなあと思います!お好きな役者さんが見つかりましたら、ぜひその名跡についても調べてみてくださいませ。

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参考文献:新版歌舞伎事典/歌舞伎 家・人・芸/服部幸雄「歌舞伎のキーワード」/博多リバレイン2017.06.09

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