先日youtubeにて、外国の方向けらしき貴重な歌舞伎の映像を発見いたしました。
これが泣けてくるほど素晴らしいものでしたので、未視聴の方にはぜひにとおすすめしたく思います!
科学映像館「KABUKI The Classic Theatre of Japan」
こちらの動画はNPO法人科学映像館のyoutubeチャンネルにて公開されている、海外向けと思われる30分の歌舞伎紹介映像であります。1964年の制作で、実際の舞台映像とともに歌舞伎の概要が英語で解説されています。
NPO法人科学映像館とは、やがて劣化・消失してしまう戦後の素晴らしいフィルム映像のデジタル化と保管を進めている団体だそうで、この動画は権利者の方からの無償提供、賛同者の方々によるデジタル復元を経て一般公開されているようであります。
科学映像館のプロジェクトに携わる方のものと思われるブログ 久米さんの科学映像便り によりますと、
製作:古賀プロダクション 企画:外務省 1964年
とあります。
1964年といえば東京オリンピックですね!日本の文化をアピールするため、外務省企画でこのようなフィルムが制作されていたのでしょうか。
舞台映像の内容はちょっと信じられないような、尋常でない豪華さであります…!興奮します。
「暫」…十七代目羽左衛門
「京鹿子娘道成寺」…六代目歌右衛門
「春興鑑獅子」…十七代目勘三郎
「助六由縁江戸桜」…十一代目團十郎・七代目梅幸・八代目三津五郎
デジタル処理されているおかげで、半世紀以上前の動画とは思えない鮮烈さ。
書籍や挿絵の写真で何度も何度もお名前やお姿を拝見している昭和の名優の方々が、高画質でいきいきと躍動するさまに感動しきりです。
個人的にとりわけ感動したのは六代目歌右衛門の登場で、あまりの美しさに涙が出そうでした…。さらに十一代目團十郎の助六の、いかにも江戸ッ子という勢い、まさに助六その人のように思えました。
また「オリンピックの年に作られた外務省企画のフィルム」とのことでしたが、そこに十七代勘三郎の春興鏡獅子が収録されているのですね…。
お孫さんである勘九郎さんが主演をお勤めになった大河ドラマ「いだてん東京オリムピック噺」とのつながりを感じ、じわじわと感動いたしました。フィルムのラストシーンは十七代の獅子の精、まさに2019年の勘九郎さんへとバトンをつないでいたようであります。
「助六由縁江戸桜」にフレームインしている若かりし小山三さんもとってもお綺麗です。ぜひとも探してみてくださいませ。
そして、映像のなかの名優たちのようすから、独特の「圧」のようなものを感じるのは私だけでしょうか。
わたくしどもは由緒正しき伝統芸能に携わる御曹司です、というようなようすではなくて、画面から飛び出してきそうな存在感と気迫でもって、この生きざまごと俺を見てくれ、といっているかのような渇望とプライドを感じます。
この空気感を作っているのが芸の素晴らしさによるものなのか、名優たちが生きた時代によるものなのかはわかりませんが、恐らく今後この独特の空気感を私自身が体感することは叶わないのであろうと思われます。
二度と戻らない心から愛しく輝かしいものをこうして映像で拝見することができ、本当に幸せに思います。
未視聴の方には、ぜひにとおすすめいたします!