歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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図夢歌舞伎 忠臣蔵 第一回を拝見して…

先日の27日に上演された図夢歌舞伎 忠臣蔵 第一回

開演間近まであまりにも謎が多く戸惑っておりましたが、まさしく佳肴ありといえども食せざればその味を知らずとはというところで 、いざ開幕しますと鳴物の音が聞こえてきただけでも大興奮でありました!

 

上演に伴って開演までついに解けなかった謎の数々も明らかとなりましたので、まずはそちらについてご紹介してから感想を述べたいと思います。内容の具体的なご紹介はすでにたくさんの記事が存在いたしますため割愛いたします。

 

アーカイブ視聴前でネタバレを避けたい方がいらしたらどうぞご注意くださいませ。

謎の答え

開演間近まで戸惑っていた謎とはこちらであります。

www.suehiroya-suehiro.com

ざっと箇条書きにしますと…

・出演者…事前収録映像+遠隔+生

・拵え…あり

・大道具…あり

・芝居の上演時間…およそ30分

・音…鳴物はあり。竹本はなし

というところです。

感想

歌舞伎初の試みである図夢歌舞伎。今回の上演を機にさまざま模索なさっていくということでしたので、生意気な物言いになってしまうかもしれませんが、記録として率直な感想を述べたいと思います。ご容赦願いたく存じます。

 

図夢歌舞伎は拵えと大道具のおかげで視覚的には歌舞伎の豪華さが保たれていて、鳴物が入っていたことでより本格の味わいに近づいていたなと感じました。

しかしながら正直なところやはり演劇のリモート作品として見るにしても映像作品として見るにしてもやや高価には感じた次第であります。

衣装・鬘・大道具・鳴物などなど多くの方々が携わっているため少しでもお力になればという思い、また幸四郎さんの新たな取り組みを応援したいという思いから全五回を購入することにしましたが、トークショーで猿弥さんが「高いなあ!」とおっしゃっていて妙にスカッとしてしまったのも事実です。

 

まずは面白かったところからお話いたしますと、松の廊下での判官目線のカメラワークには、もう大変興奮いたしました…!

客席からの妄想ではなくて、がっつりと目が合う体感ができるというのも図夢歌舞伎ならではの楽しみなのですね…!

まさしくバーチャル判官体験と申しますか、幸四郎さんの師直の憎々しさたるや、これは斬っちゃうなーと納得のものでありました。画面の圧と緊迫感が尋常でなく、半沢直樹を見ている時のような感覚を覚えます。

 

そして大序~三段目の内容を30分に凝縮した構成の妙も素晴らしいと思いました!

上演時間30分というのは短いように思いますが、構成の素晴らしさにより満足感があります。

とはいえ、果たして仮名手本忠臣蔵の筋を知らない方でも同じように感じられるのかは全く不明であります。既に知っているため見ながら脳内で補完しているところが大きいと思います。

 

それはおそらくロケーションの切り替わりの視覚表現がなかったことも一因で、加古川本蔵の登場シーンなどはその脳内補完に頼るところが大きすぎたのではないかなーと感じました。

フィクションの実写映像で抽象空間を表現するのは難しいですし、浮世絵でも良いので場所の切り替わりがわかるカットが挟まれるともう少しわかりやすかったかもしれません。

 

 

映像のクオリティの点では、役者のセリフと鳴物の音量のレベルが一定でないことと、空調や人の声、動作音などが聞こえること、複数画面でそれぞれの画面の照明と色味が均質でないこと、バストショットの多さなどが気になりました。

現代では知らず知らずのうちに映像を見る目が肥えてきていると思いますが、だからといって全てを高品質にすべきと言いたいのではなくて、音・色・照明・画角などの「映像としての全体のバランス」が取れているだけでも、もっと図夢歌舞伎の魅力が伝わるのではないかなと思いました。

はじめての試みとはいえ観客の集中力を欠いてしまう要素が多かったのはもったいないことだと感じました。今後改善されることを期待しております。

 

いろいろと申しましたが、オンラインの良さを生かし歌舞伎をご覧になったことのない方にも開かれた歌舞伎として作られているのか、既に歌舞伎を知っている人に向けて作られたものなのか、一体どちらなのであろうな…というのが総合的な感想です。

前者なのでしたら話題の劇団ノーミーツが協力していることはさらにアピールした方が盛り上がりそうでしたがどうなのでしょうか。

 

このすえひろの至らなさもあり一度の視聴では役者さんたちの芸まで堪能する境地には至ることができませんでしたので、今後も何度かアーカイブ視聴をしようと思っております。

このような状況下でトーク配信に留まらず裏方の方々の一流のお仕事を加えた上で古典に則った全く新しい興行を生み出すというこの試みについては本当に素晴らしいものだと思います。今後の発展が楽しみでなりません。

果たして第二回はどのような作品になるのでしょうか、楽しみに待ちたいと思います!

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