新型コロナの外出自粛期間に始めた「Googleストリートビューで芝居の舞台となった場所とその周辺を訪ねてみる」という遊び。本日もひとつ訪ねてみようと思います。ゆるゆるとした旅ですがみなさまもぜひご一緒にいかがでしょうか。
ただいま上演中の八月花形歌舞伎にちなみまして、第四部「与話情浮名横櫛」ゆかりの地をうろうろしてみたいと思います。あえて行き当たりばったりのうえ、事情があり画像そのものを貼ることができず地図埋め込みとなりますが、何卒ご了承くださいませ。
前回:仮名手本忠臣蔵 九段目編
与話情浮名横櫛とは
「与話情浮名横櫛」は、やくざの妾であるお富への一目惚れの恋をきっかけに、文字通り傷だらけになっておちぶれてしまった与三郎という男が、三年後にお富と再会する…というハードな恋愛物語であります。
再会の舞台は鎌倉ということになっていますが、実際は東京は人形町にある玄冶店(げんやだな)と呼ばれる地域が舞台といわれていますので、今回はそのあたりへ行ってみようと思います。
さっそく行ってみましょう
徳川家の御典医である岡本玄冶の屋敷があり、玄冶が主に芝居関係者たちのために家を貸していたという玄冶店はこのあたりのようです。
が、人形町といえばやはり明治座がおなじみですのでちょっと明治座を懐かしんでからぶらぶらいたしましょうか。
この豪華絢爛なロビー!懐かしいですね!
芝居は非日常ですから、劇場にはこのような過剰すぎるほどに晴れやかな空間が欠かせないなと思います。東京でもっとも歴史のある明治座、さすがであります。
さて、仕切り直して玄冶店へ向かいたいと思います!
このドラッグストアがある建物あたりから2ブロック程度が玄冶店と呼ばれたエリアのようです。
ドラッグストアの前に玄冶店跡の碑を発見。このあたりは個人的に身近な地域なのですが、このような碑があることは全く知らずにおりました。
ドラッグストアとビルの間を進みますと、将軍から玄冶に下賜されたと伝わる神社が出現しました。江戸時代の芝居関係者たちもここで願掛けをしたりしたのでしょうか。
このあたりに芝居関係者たちの暮らす長屋が立ち並んでいたのかなあと思われます。なにやら風情がある道で、松井今朝子の小説を読んでいるかのような気分になってまいります。
おっ、なんとも風情のある建物が!料亭でしょうか?
女形の大物がひょいと現れそうなお屋敷に見えてまいります。
ブロックの出口あたりにはおいしそうなお肉屋さんが。
今度行ってみようかなと思います。テイクアウトはあるでしょうか…
せっかくですから、与三郎とお富が出会う木更津の海を眺めて旅の結びといたしましょう。木更津の「恋人たちの聖地」と呼ばれる場所です。
お富と与三郎ゆかりの地であるから「恋人の聖地」と呼ばれているわけではなく、シンプルにこの景色がロマンティックな雰囲気であるからだそうです。お富と与三郎の恋は憧れるにはあまりにもハードかつドライすぎますから、それはそうだろうなと思います。
宮藤官九郎さん脚本のドラマ「木更津キャッツアイ」に登場する、恋人の聖地にかかっている伝説の赤い橋から眺めた海。見事ですね!
ドラマ内ではこの橋を男女がおんぶで渡ると恋が叶うとされていました。結構な距離と高さであり、たしかにこの大変な橋を二人で渡り切れば何かが生まれそうです。もし与三郎がお富をおぶったとして、果たしてここを渡りきれたでしょうか…