先日のお話ですが、歌舞伎座へ出かけまして十月大歌舞伎の第一部「双蝶々曲輪日記 角力場」を拝見してまいりました!備忘録として感想を少しばかりしたためておきたいと思います。
濡髪の大きさとおすもうさんの思い出
今月の主な配役
濡髪長五郎 白鸚さん
山崎屋与五郎/放駒長吉 勘九郎さん
双蝶々曲輪日記を二カ月連続で拝見できるというなかなか珍しい機会です。
「角力場」といえば相撲興行の賑わいが舞台上に表現されていたはずでしたが、感染対策の観点からか舞台上の人数はかなり減っていたように思います。\長吉勝った、長吉勝った/とはやしながら飛び出してくる人々の姿はなく声のみという演出で、仕方がないことではありますがやはり寂しく感じました。一日も早くにぎにぎしい舞台が戻ってほしいですね。
先月の「引窓」での吉右衛門さんの濡髪と同様、今月も白鸚さんの濡髪の存在感の大きさに圧倒されました!いろいろな要素を持つお芝居ですが、やはり濡髪がすべての中心なのだなあとつくづく感じた次第です。
また今月は勘九郎さんが山崎屋与五郎と放駒長吉をどちらもお勤めになるという趣向。どちらも違った可愛らしさのある役どころかと思います。個人的に与五郎が好きすぎて譲れぬこだわりのあるせいで、長吉の勘九郎さんの方が好きでありました。
これは余談なのですが、これまであまり気に留めていなかった部分におおおと思うところがありました。
角力小屋の扉が開いて濡髪が登場する場面は、濡髪の体に対して出入り口がかなり小さくて、3階席からでは全身が見えないのですね!
このようすを見て、以前、場所が始まる前の国技館にて、偶然に勢(いきおい)関をお見掛けしたときのことが思い出されました。
確かあれは冬のことだったと思います。勢関は黒っぽい少しかしこまった着物をお召しになっていて、小さな窓口に向かって中にいる係の方と何かやりとりをなさっていました。勢関は身長194cmとあまりにも大きいので、少し離れたドアの外側にいた私からは全身が見えず、首から下だけ。まさにあの濡髪の登場シーンさながらでありました。
やりとりで少しかがまれた際にチラッとお顔が見えて勢関であると気づき、うわー!なんて立派なのだろうか!と惚れ惚れとし、何やら縁起の良いようなありがたさが胸に湧きあがってきたのでした。
白鸚さんの濡髪の存在感が爆発しているな登場シーンを拝見してそんな勢関の思い出がハッと呼び起こされ、立派なおすもうさんを目の当たりにした時のよろこびをよく表した演出であるなあと大変感動した次第であります。