歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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国立劇場第一部を見てきました! 2020年11月

先日のお話ですが、国立劇場へ出かけまして11月歌舞伎公演の第一部を拝見してまいりました!備忘録として少しばかり感想をしたためておきたいと思います。

無常観に打ちのめされ

第一部は「平家女護島 俊寛」。今月は序幕として「六波羅清盛館の場」が上演されている貴重な機会です。

六波羅清盛館の場」は俊寛の妻・東屋が清盛に言い寄られて自害するという場面で、東屋を菊之助さんが、清盛と俊寛の二役を吉右衛門さんがお勤めになっています。

東屋は決して清盛の妾にはならぬという毅然とした女性で、菊之助さんの東屋の上品で聡明なようすから高潔さが感じられました。一方で、芝居の中でも言及されていましたが、常盤御前は敵の清盛の恋慕を受け入れることで息子の頼朝や義経を守ったのでしたね。

戦に翻弄された女性たちの選択もさまざまであり、いずれにしてもその人生になんとももの悲しいものを感じました。まさに無常というところです。

 

この場面を拝見したことで続く「鬼界ヶ島の場」の見え方や言葉の聞こえ方が、一層奥行をもって深まったように思われました。

ちょっと今手元に正確なセリフを調べる手段がないのですが、東屋のいない都では月花を見たくもないというような瞬間のセリフがあったと思います。この部分から、二人で月や花を愛でる夫婦の姿や過ごしてきた月日が想起され、なんとも胸を締め付けられました。またしても無常であります。

 

吉右衛門さんの俊寛は依然拝見したときよりも流人の弱々しいようすが際立っていたように思われましたが、そのぶん最後のシーンの加速に強烈なコントラストを感じました。岩に上り船を追いかけ松の枝をへし折ってしまうほどの「生きようとする力」が鮮烈に伝わってきて、ガーンと胸を打たれました…。しばらく余韻で座席から立ちあがれなくなりそうな、言葉では表現しようのない強烈な印象でありました。。

吉右衛門さんの芝居はもちろんのこと、「平家女護島」そのものも平家物語の世界に流れている心を近世以降の人間にも抱かせる物語として傑作であるなとつくづく思い、近松への尊敬の念を深めました。

 

それはそうと、先日松竹歌舞伎会の「ほうおう」が届きまして、中に以前のように筋書100円割引券が入っていました!!!

ということは、筋書の販売が再開されたということですよね…?これまでの無料筋書もありがたい品でしたが、販売の再開はとてもうれしいです…!!!!!

個人の筋書購入では微々たるものですけれども、自分にも収益のため何かできることがある状態というのは本当に喜ばしいことだなあと思います。全てが元通りというわけにはなかなかいかないかとは思いますが、今後も何かがひとつひとつ元に戻っていくことが楽しみです。

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