ただいま国立劇場で上演中の12月歌舞伎公演!
今月は第一部・第二部ともに、幕末期に活躍した名作者・河竹黙阿弥の人気演目が上演されています。河竹黙阿弥の演目はセリフの美しさやアウトロー的カッコよさにあふれていて、初めてご覧になる方にも大変おすすめです。
第一部で上演されている「三人吉三巴白浪」は、過去にこちらのブログでお話したものがたくさんありますので、ここにひとつまとめてみます!今回初めてご覧になる方の何らかのお役に立てれば幸いです。
三人吉三巴白浪とは
三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)は、1860年(安政7年)の1月に江戸は市村座にて初演されたお芝居であります。河竹黙阿弥が二代目河竹新七の時代に作られたもので、江戸時代の現代ドラマである「世話物」と呼ばれるジャンルの名作として知られています。
主人公は、和尚吉三・お坊吉三・お嬢吉三とそれぞれ呼ばれている三人の吉三郎。節分の夜に偶然出会った三人は揃って盗賊で、義兄弟の契りを交わしたところからぐるぐると因果が巡り狂いゆく運命に翻弄されていきます。歌舞伎屈指の名台詞と、独特の退廃的な色気や焦燥感が魅力的な物語です。
あらすじ
因果が複雑に絡み合う物語なので、初見では少しわかりにくい部分もあるかと思います。ダラダラとしていて長いのですが、演目全体の流れをお話したものがありますのでご興味あらばお読みいただければと思います。
演目のモチーフ
「三人吉三」のおもしろさのひとつが、当時の民間信仰や通俗的な存在を巧みにモチーフとして取り入れている点かと思います。
特に「庚申」については、知ってからより演目がおもしろく感じられた情報でしたので、お話したいなと思いました。「八百屋お七」も、歌舞伎や浄瑠璃ではお馴染みの女性ですのでご紹介したく思います。
なんだか惹かれる「女性装の盗賊」
河竹黙阿弥作の演目には歌舞伎屈指の名セリフとされるものがいくつもありますが、中でもとりわけて有名な2つはどういうわけか「女性装の盗賊」のものです。
女性装の盗賊というのは「三人吉三」のお嬢吉三と「弁天娘女男白浪」の弁天小僧菊之助であります。2人は現代にいたるまで長年愛されているわけですが、それぞれが違っていて興味深いなと思ったので、盗みの手口などから比較してみました。
似た特徴を持つキャラクターを巧みに描き分けて深みを持たせている、黙阿弥という作者のすごさを再認識した次第です。
ゆかりの地
芝居ゆかりの地が大好きなのですが、三人吉三はゆかりの地が都内に集中していて多いという特徴があります。つまり、数時間でササッとめぐることができます!状況が良くなり町をぶらぶらとできるようになった暁には、ぜひおでかけくださいませ。
三人吉三はロケーションに現実感を持たせているからこそ、現代においても演目の世界の中に自分もいるかのような没入感を味わうことができるのかもしれませんね。やはり黙阿弥…すごい方です。