早いもので2020年も今日でおわり…
今年は本当に新型コロナウイルス一色で、例年のような芝居に忙しい一年は過ごせませんでしたが、それでも芝居の楽しい一年でありました。劇場の感染対策を徹底し並々ならぬ覚悟で迎えてくださった方々のおかげであり、感謝の気持ちでいっぱいです。
思い出されるのは菅丞相
いま一年間の芝居を振りかえって思い出されるのは、二月大歌舞伎の「菅原伝授手習鑑 道明寺」でしょうか…。
新型コロナによって変わってしまった世界から仁左衛門さんの菅丞相の神のごとき崇高さを思い出しますと、これまでよりもより一層遠い世界の存在のように思え、切ないような思いに駆られます。
あれは以前の上演形態として最後の公演であり、二月がはるか遠く、ひとつ前の時代のようです。いつかまた観客がざわざわとひしめき合う歌舞伎座に戻りたいですね…
とはいえ「新薄雪物語」のyoutube配信や図夢歌舞伎といったコロナ禍ならではの取組みもまた、素晴らしいものでした。これまで長らく芝居を生きがいとしてきましたから、エンタメ不足のつらさが身に染みていて、心底ありがたく感じました。
そういった時期を経て待ちに待った歌舞伎座再開場、八月花形歌舞伎「棒しばり」での勘九郎さんの幸せそうなお顔はいつまでも忘れられません。
これまでエンターテインメントのおかげで様々な憂さを乗り越えることができたわけですが、提供された場を楽しむことそのものが、エンターテインメントに携わる方にとっても何らかの力になれているのかもしれないと、おこがましくも思うことができた瞬間でした。
ライブハウスや劇場などで感染が発生した際には大々的に報じられてしまうのに、対策を徹底し感染を拡大させていない場所について報じられる機会はあまりありません。社会が危機的状況に陥れば不要不急とされてしまう業界ですが、それを生業とされている方が数多といること、その楽しみのおかげで生きられる方も数多といることを、忘れずにいたいと思います。
2020年は正直なところ、苦しい一年でした。
大幹部の方々と若い世代の役者さんたちとの共演機会が減り、伝承の機会が減ってしまうことや、東京和楽器の危機など心配事は尽きませんが、来年は少しでも事態が好転するよう願っております。
ブログをお読みいただいた皆様には、本年中も大変お世話になりました。
芝居がない期間にもなんとかブログの運営を続けることができ、ほっとしております。来年も引き続き運営してまいりますので、よろしくお願いいたします。また、このような状況で劇場へお出かけになれない方に、ちょっとした芝居気分をお届けできていたらうれしく思います。
来年はどんな芝居が待っているのでしょうか。来年こそ良い年にしてまいりましょう。