歌舞伎ちゃん 二段目

『歌舞伎のある日常を!』 歌舞伎バカ一代、芳川末廣です。歌舞伎学会会員・国際浮世絵学会会員。2013年6月より毎日ブログを更新しております。 「歌舞伎が大好き!」という方や「歌舞伎を見てみたい!」という方のお役に立てればうれしく思います。 mail@suehiroya-suehiro.com

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第一部を見てきました! 2021年1月

ここのところ非常に冷え込んでいますがみなさまいかがお過ごしでしょうか?

このすえひろはといえば、人と話す機会が減って衰えた表情筋を鍛えるため、するめを噛みしめております。ストレス発散にも良いそうです。みなさまも何卒ご自愛くださいませ。

先日歌舞伎座へ出かけまして、第一部を拝見してまいりました。備忘録として少しばかり感想をしたためておきたいと思います。

悪太郎がおもしろすぎた

第一部の一幕目は「壽浅草柱建」。松也さんをはじめとする新春浅草歌舞伎にご出演の若手花形の方々がそろい踏み、曽我対面の登場人物たちをお勤めになる一幕であります。残念ながらこのすえひろが拝見した日は莟玉さんは休演なさっていました。その後お加減は大丈夫でしょうか、お若いですがとても心配です。このような時節ですから大事をとっていただきたいですね。

浅葱幕が落ちて皆様が登場された時の拍手は格別でありました。本当ならば浅草で一カ月にわたり大きな役をお勤めになっていたはずであり、大切な伝承機会が失われてしまいましたが、それでもこうして歌舞伎座の舞台でご活躍を拝見することができたことに胸が熱くなり、ウッと感極まってしまいました。最近妙に涙もろくなり自分でも戸惑います。

今回は浅草歌舞伎のゆかりということで、工藤祐経が通行手形の代わりに浅草寺のお札を曽我兄弟に渡して疫病退散を願うという趣向でした。このお札というのがどうやら小道具ではなさそうな、本物っぽい見た目でしたがどうなのでしょうね。来年の新春浅草歌舞伎の無事の開催を願わずにはいられない光景でありました。

それはそうと浅草歌舞伎のメンバーでは松也さんが五郎をお勤めになるのが定番化しているようですが、個人的にはぜひ十郎も拝見したいです。今後がとても楽しみです。

 

二幕目は「悪太郎」。猿之助さんの悪太郎、福之助さんの智蓮坊、猿弥さんの安木松之丞、鷹之資さんの太郎冠者という配役です。この幕がなんともいえずおもしろく、夢中で拝見いたしました。役者さんお一人お一人によるグルーブ感が最高で、幕切れの四人の踊りなど特に楽しかったです。これは配信でもぜひ拝見したい舞台であります。

猿之助さんの悪太郎が素晴らしいのはもはや当然のこととして、今回特に惹かれたのは福之助さんであります。24歳というお若さで猿之助さんとの舞踊にて存在感を発揮するというのは至難の技であろうというところを、懸命にお勤めになっていて感動しました。お若い役者さんの大舞台での舞踊はどうしても力みが見えやすいものと思いますが、良い意味で力が抜けておしゃれです。

猿之助さんとのこの一カ月でどれほど成長なさるか図り知れず、お若い役者さんにとって先輩との共演の機会がいかに大切なことか改めて感じました。近ごろ特に舞踊でのご活躍を注目しはじめていたのですが、このような状況にあってもコツコツと修行に励まれているのだなと伺い知れる舞台で、元気をいただきました。今後のご活躍を楽しみにしています。

 

歌舞伎座の中のようすに少し変化があり、ロビーのベンチの座席間隔が広げられ、座ることのできる席が減らされていたようでした。今月から幕間が導入されたことや、感染者が増えていることへの対策かと思います。

幕間にロビーでお話なさる方もなく、みなさん散り散りになってじっとスマホを眺めている…という光景でした。混雑を避けるため私が出かけているのは平日ですので、土日はまた少し違うのかもしれませんが、8月の再開場以降ずっとこの緊張感を保つことができているというのはすごいことだと思います。

そんな歌舞伎座ですので、このまま休業することなく営業を続けてほしいと切に願っています。心の底から応援しています。

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